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いざ聴かん、カッコウの声…源実朝が北条泰時たちと早朝バードウォッチングに出かけたお話し【鎌倉殿の13人】

いざ聴かん、カッコウの声…源実朝が北条泰時たちと早朝バードウォッチングに出かけたお話し【鎌倉殿の13人】

……という訳で翌日の未明。まだ夜明け前というのに、実朝はいそいそと永福寺へとお出かけです。

ここでドラマなんかだと、こっそり御所を抜け出してのお忍びなのでしょうが、そんな訳には行きません。

北条泰時(ほうじょう やすとき)はじめ、藤原範高(ふじわらの のりたか)・内藤知親(ないとう ともちか)・二階堂行村(にかいどう ゆきむら)・東重胤(とうの しげたね)・町野康俊(まちの やすとし)らがお供として付き従います。

((やれやれ、何だってこんな時間に……))

少なからぬ御家人たちが内心不満に思ったことでしょうが、カッコウは早朝(個体によりそれ以前)に啼くため、声を聴きたければこのくらいの時間がいいのです。

「さぁ着いたぞ。カッコウは啼いてくれるかな?」

「啼いてくれるといいですねぇ……」

しかし、待つこと数時間。すっかり夜が明けてもカッコウは一声も啼いてくれませんでした。

「……空振りでしたね」

「仕方ない。帰ろうか」

せっかく眠いところ我慢してやってきたのに……実朝ご一行様は、トボトボと御所へ帰って行ったということです。

終わりに

陰。未明。將軍家渡御永福寺。相摸太郎殿候御共給。其外範高。知親。行村。重胤。康俊等也。上下爲歩儀。是於此所。昨朝聞郭公初聲之由。依有申之輩也。至林頭。數尅雖令待之給。無其聲之間。空以還御。今日。當寺事。可令行村奉行之旨。被仰付之。

※『吾妻鏡』建暦元年(1211年)4月29日条

以上、カッコウの声を聴きそびれた実朝のエピソードを紹介しました。

ちなみに、この「郭公」をカッコウでなくホトトギスとする(よく似ているので混同される)解釈もあり、実朝の歌集『金槐和歌集』にはホトトギスを詠んだ歌も多く残されています。

やまちかく いへゐしをれは ほとときす
なくはつこゑは われのみそきく

※『金槐和歌集』より

【意訳】山近い家の中、ホトトギスの啼いた初声を、私だけが聴いている。

世の中の雑音を排して、静かな空間で独り、ホトトギスの声にうっとりしている実朝の姿が目に浮かぶようですね。

鎌倉殿だからこそ風雅を愛する余裕があった一方で、鎌倉殿だからこそ世の雑音から逃れられなかった実朝。その苦悩と葛藤は、多くの作品から偲ばれます。

※参考文献:

 

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