比企能員、暗殺計画!北条時政の命により仁田忠常と天野遠景は…後編【鎌倉殿の13人】:3ページ目
エピローグ
さて、比企一族の滅亡から4日が経った9月6日。忠常は比企能員を仕留める大手柄の恩賞をもらうため、時政の館へ招かれました。
「いやぁ、此度のことは仁田殿が殊勲なくして成り得なんだ。恩賞はうんと弾みもうそう……」
「ははぁ、ありがたき仕合せにございまする!」
ちょっと挨拶して(恩賞の約束をとりつけて)帰るつもりだった忠常でしたが、時政はもう大喜びで歓迎します。
一方、あまりに長く引き留められたため、門前で待たされていた忠常の下男たちは何だか不安になってきました。
「おい、大丈夫かよ。たしか四郎様は……」
実は比企一族を喪った頼家が時政討伐を命じる書状を発しており、その一通が忠常の元へ届いていました。
もう一通が発せられた和田義盛はそれをすぐに時政に提出して敵意のないことを示したものの、忠常はまだ書状を持っているはず。
「もしかして、書状のことがバレたんじゃ……」
「ということは、四郎様はもう……」
疑心暗鬼に陥った下男たちは、慌てて館へ逃げ帰って忠常の弟である仁田五郎忠正(ごろうただまさ)・仁田六郎忠時(ろくろうただとき)に報告しました。
「何だと、兄上が……こうなったら仇討ちだ、北条だろうが何だろうが皆殺しにしてくれようぞ!」
「狙うは江間小四郎(義時)、まずはアイツを血祭りじゃ!」
早とちりで挙兵した五郎と六郎は、義時がいると聞いた御所へと進撃しますが、御家人である波多野五郎忠綱(はたの ごろうただつな)によって返り討ちに。
五郎はたちまち首級を奪られて梟首(きょうしゅ。さらし首)とされ、六郎は火を放って自刃したのでした。
「ん、何だありゃ?」
そんな事とも知らずに時政からさんざんもてなされて帰宅途中の忠常(下男が勝手に帰ってしまったことに、怒っていたのでしょうか)。
御所の方角で上がる炎を見て不審に思い、近くの者に話を聞いたところ、どうやら自分の弟たちが謀叛を起こしてしまったとのこと。
「何と言う事だ……しかしこうなってしまった以上、戦って命を棄てるまでだ」
たった一人で御所へ向かおうとした忠常でしたが、
「させねぇよ」
現れたのは挙兵以来の同志である加藤次景廉。忠常はあっけなく殺されてしまったのでした。