これは蒲殿ロス不可避…源範頼が失脚に追い込まれた失言とは?【鎌倉殿の13人】:3ページ目
死一等を減じられ、実質的に伊豆への流罪
誠心誠意の起請文も受け付けてもらえない。どうすればいいんだ……悶々と悩む範頼。そんな8月10日、家人の當麻太郎(たいま たろう)が捕らえられたとの情報が入ります。
何と當麻太郎は夜明け前の寅刻(午前4時ごろ)、頼朝の寝所しかも床下に潜伏していたと言うのです。
「何てことを……それがしは知らぬ!命じておらぬ!」
頼朝があらかじめ手配しておいた結城朝光(ゆうき ともみつ)・宇佐美祐茂(うさみ すけもち)・梶原景季(演:柾木玲弥)らによって捕らわれた當麻太郎も「これは謀叛ではない」との一点張り。
とは言え時間が時間、場所も場所。かねて疑いがある上、當麻太郎は範頼が信頼する勇士。範頼は主従ともども有罪とされてしまいます。
「……が、大姫(演:南沙良)のご病気に免じて死一等を減じ、伊豆への『下向』を命じる」
かねて病弱であった大姫は近ごろ特に病が重く、これは頼朝による過酷な処罰が神仏の怒りにふれたゆえとされていました。
とにもかくにも命ばかりは助かった範頼。しかし下向(地方への赴任)とは言っても、その実態は流罪と同じです。
……帰参その期あるべからず。ひとへに配流のごとし。
※『吾妻鏡』建久4年(1193年)8月17日
【意訳】二度と鎌倉へ帰ってきてはならないよう命じられ、流罪も同然である。
かくして伊豆へと下向した範頼は、そのまま歴史の表舞台より姿を消したのでした。
終わりに
かくして鎌倉を去った範頼。『吾妻鏡』では以後の記録がない一方で、『保暦間記』や『北條九代記』などでは粛清されたと伝えられます。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、どのような最期を迎えるのでしょうか。
「和解は諦め、流罪も受け入れる。だからどうか死なせないで……!」
そんなファンの声が聞こえてくるようです。『吾妻鏡』で言及がないので、ワンチャン命だけは永らえて欲しい。
でも、そんなファンの思いをあえて踏みにじってみせるのが三谷幸喜クオリティ。きっと非業の死を遂げてしまうのでしょう。心して、見届けたいと思います。
※参考文献:
- 貴志正造 訳『全譯吾妻鏡 第二巻』新人物往来社、1979年10月
- 小瀬道甫『保暦間記』