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「鎌倉殿の13人」ついに平家討伐の最終決戦!第18回放送「壇ノ浦に舞った男」予習【前編・屋島の合戦】

「鎌倉殿の13人」ついに平家討伐の最終決戦!第18回放送「壇ノ浦に舞った男」予習【前編・屋島の合戦】

エピソード3・扇の的

さて、本拠地を奪われた平家方は当然ながら死に物狂いで戦います。そんな中、平家方の船から扇が高く差し出されました。

「何の合図じゃ、あれは?」

義経が後藤兵衛実基(ごとうの ひょうゑさねもと)に尋ねたところ、どうやら「射られるものなら落としてみよ」という挑発のようです。

遠く離れて波間に揺れる扇の的……なかなか射るのは難しそうですが、ここで下野国(栃木県)の住人・那須与一宗高(なすの よいちむねたか)が推薦されました。

「与一の腕前はどんなモンだ」

「飛ぶ鳥を射れば、2/3くらいの確率で射落とせるほどでさぁ」

「ふーん……おぅ与一、あの扇の的を射落とせ」

「正直、あんな不安定な的を射落とせる自信がありません。仕損じたら味方の士気も下がりますし、もっと腕の確かな方にお任せいただけませんか」

辞退する与一に、義経は怒鳴りつけます。

「何だと、俺の命令が聞けないのか!逆らうヤツはとっとと帰れ!」

現代社会なら「ハイさようなら」案件ですが、ここで大人しく帰ったところで、ロクな未来は待っていません。

仕方なく命令を受けた与一は、運を天に任せて扇の的に挑みました。

「南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光権現、宇都宮、那須の温泉大明神、願はくはあの扇の真中射させて給ばせ給へ。これを射損ずるものならば、弓切り折り、自害して、人に再び面を向ふべからず。今一度、本国へ向かへんと思し召さば、この矢外させ給ふな」

※『平家物語』巻第十一「扇の的」より

源氏の氏神である八幡大菩薩と皇室の祖先である神明(天照大御神)に始まり、日光権現(日光二荒山神社)、宇都宮(宇都宮二荒山神社)そして那須の温泉大明神(那須温泉神社)……思いつく限りあらゆる神様に願をかけているところに必死さが感じられますね。

必死な願いが神々に聞き届けられたのか、矢はみごとに的中。敵味方の分け隔てなく、与一の腕前を賞賛したのでした。

ここで終われば「よかったね、与一」なのですが、感動のあまり平家方の武者(50歳くらい、黒革縅の鎧を着用)が扇の的が立っていた辺りで舞いを披露します。

それが挑発に見えたのでしょうか。与一の後ろから、義経の郎党である伊勢三郎義盛(いせの さぶろうよしもり)がやって来て

「九郎殿のご命令だ。あの者を射よ」

と言うので、仕方なく与一はその武者を射殺しました。もはや勝敗は決しているのだから、感極まって舞う者まで射る必要はないではないか……無粋なやり方に、心ある者は嘆息したということです。

【後半・壇ノ浦の合戦編へ続く】

※参考文献:

  • 菱沼一憲『源義経の合戦と戦略 その伝説と虚像』角川書店、2005年4月
  • 元木泰雄『源義経』吉川弘文館、2007年1月
  • 森本繁『源平 海の合戦 史実と伝承を紀行する』新人物往来社、2005年1月
 

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