「鎌倉殿の13人」佐藤浩市 演じる上総介広常の最期は近い!?第15回放送「足固めの儀式」を予習:3ページ目
終わりに
ちなみに双六(すごろく)とはよくイメージされる人生ゲーム的なものではなく、バックギャモンに近いルールや道具で遊ぶものでした。
当時、庶民からやんごとなき方々まで大流行。博奕に使われて破産する者が後を絶たなかったため、たびたび禁止令が出されたと言うから驚きです。
景時はそんな双六に広常を誘い、大いに盛り上がったところを一刀に斬殺したのでした。
景時「磯n……じゃなかった上総殿、双六しようぜ!」
広常「いいよ。それじゃあ鎌倉殿の御所でな!」
なぜ他人の家でゲームするのか……とも思ってしまいますが、当時の御所は御家人たちのコミュニティスペースとしてしばしば活用されていました。御所で開かれた宴会や双六大会など、様々なイベントの様子が『吾妻鏡』にも記されています。
和気あいあいと盛り上がった次の瞬間、刀を抜いて斬り殺す。こうした残虐さと長閑(のどか)さ、ゆるさを併せ持つのが坂東武者という生き物でした。
壽永三年正月小一日辛卯。霽。鶴岡八幡宮有御神樂。前武衛無御參宮。去冬依廣常事。營中穢氣之故也。……(以下略)
※『吾妻鏡』寿永3年(1184年)1月1日条
【意訳】この日は晴れ。鶴岡八幡宮でお神楽があったが、頼朝は参拝しなかった。去年の冬(12月22日)に広常を暗殺して心身がケガレていたからである。
……頼朝の御所で殺人事件があったため、そこに住む頼朝も穢れた心身で神前に出ることを遠慮したのです。現代でも喪中に神社へ参拝しなかったり、年始の挨拶を自粛したりする感覚と似ていますね。
なお、間もなく頼朝たちは広常を殺したことを深く後悔するのですが、それは又のお楽しみ(尺の都合上、大河ドラマでは割愛されるかも知れませんが……)。
果たして大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、広常の最期をどのように描くのでしょうか。広常ファンとしては心苦しい限りながら、覚悟して見届けたく思います。
※参考文献:
- 細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書、2021年11月
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月