山形県は日本を代表する「ラーメン大好き県」その歴史と現況を探る【後編】:2ページ目
観光資源としての難点
ただこのように、「山形県と言えばこのラーメン」と決まったスタイルがないので、その点は観光資源としては少々不利な面もあります。
山形のラーメンが食べたいという観光客に対しては、せいぜい、比較的うまいと評判のラーメン屋を紹介するくらいしかできないでしょう。
しかしそれも簡単ではありません。今でこそ「ラヲタ」などの言葉が生まれたりして、ラーメンについて一家言持つ人も増えましたが、山形ではラーメンを消費する側も昔から個人的な好みにうるさいところがあります。
もはや一人ひとりが自分の「うるささ」に気付いていないことも多く、やれしょうゆ味がいい、みそ味がいい、塩味がいい、麺は細麺だ太麺だちぢれだストレートだ、出汁は牛肉がいいニボシがいい、野菜の量が多すぎる、シンプルなのがいい、あの店はうまいこの店は不味いと、山形のラーメン好きの人の会話は常に平行線です。
山形の「食」の話題で、よく「芋煮」が挙げられることがあり、特に「しょうゆ味」と「みそ味」の地域ごとの対立がネタになることが多いですが、本当は芋煮の地域差などよりも、ラーメンの個人個人の好みの対立の方が、問題としては根深いと言っていいでしょう。
よって、山形県民が「おいしい」と感じるラーメン店を観光客に紹介するとなると、無自覚のうちに個人的な好みが前面に出てしまうことも多いのです。
このような点は、「ラーメン県」の難しさと言えるでしょう。
「ラーメン消費量日本一」の行方は?
ところで、この文を書き終えたあと衝撃的なニュースが入りました。
なんと、2021年の「ラーメン消費量日本一」の座を、新潟市に奪われてしまったそうです。
1世帯あたりの消費金額は13,434円で前年より777円上回りましたが、新潟市は2,356円増えて13,734円という急上昇ぶりです。
山形市の日本一は8年連続で終了しましたが、今年2022年にどのように巻き返すか目が離せません。