それ、火を消すより大事なの?平安京の火災と貴族たちの反応にびっくり:2ページ目
火を消すよりも、身分が大事?
せっかく平安京の話をしているので、平安貴族らしい事件と言えば、こんなこともありました。
万寿4年(1027年)9月、清涼殿の南西にある鬼間(おにのま。裏鬼門?)から出火した時のこと。
「誰か、誰か!」
火災を発見した女官は、見回りをしていた源蔵人経成(みなもとの くろうどつねなり)の僕従に声をかけて火を撲滅させました。
この撲滅(ぼくめつ)とは文字通り「うちほろぼす」ことで、水にぬらした布などで火を叩き消したのです。
「いやぁ、お陰様で助かりました」
小火(ぼや)ですんで何より何より……と思っていたところ、経成はこの僕従を逮捕。右近衛陣に拘禁します。
誰がどう見てもお手柄の筈なのに、どうしてでしょうか。
「下人の分際で殿上に昇るなど、けしからん!」
当時、内裏の殿上(屋内&縁側)へ昇るには、五位以上の位階(身分)が必要でした。
そう言う経成は六位ですが、上級貴族に仕える蔵人の職務上、特例として殿上へ昇ることが許されています。
身の程をわきまえず、殿上の火事を消すとは不届き千万……いやいや、さすがに緊急事態なんだから許してあげなさいよ。
という事で、関白の藤原頼通(ふじわらの よりみち)はこの僕従を赦免しています。よかったですね。
これは初期消火が成功した例ですが、次はどうでしょうか。