偉人かはたまた人格破綻者か…やっぱりいろいろスゴいぞ!野口英世:3ページ目
野口英世の情熱、パワー、エネルギー
しかし、アメリカへ再び渡航してから、野口の栄光にも陰りが見えてきます。彼は黄熱病の研究に取り組み、病原菌を発見しワクチン開発までこぎつけたのですが、その効果が芳しくなかったことから、研究者の間でも野口の業績に疑問を抱く声が出始めます。
そこで野口は、自分の研究成果の証明のために、妻の反対を押し切ってまでアフリカ大陸のガーナに赴いて研究を進めます。ところが、ここで彼自身が黄熱病に罹患して命を落としてしまうのでした。
享年51歳。あまりの若さにちょっと驚きますが、素行や人間性はともかくとしても、医学に対して命を懸けてフルスピードで人生を駆け抜けたことは間違いないでしょう。
さて、野口の業績が、今ではほとんど見るところがなく、有り体に言えば「間違いだらけ」なのは周知のごとくです。
ただこういった学説というのは、時代によって定説が変わっていくのはよくあることです。それ自体で野口英世という人物を貶める根拠にはなりません。
また彼は確かに、渡辺淳一の言葉を借りれば「金銭的人格破綻者」でした。しかし彼の学問的野心、肉親への愛情、恩師への感謝の念は否定しがたく、愛情にしろ金銭の使い方にしろ、彼の中にはパワーとエネルギーが溢れていたのだと思います。
こういう人、歴史上でもたまに出現するんですよね。とても頭が良くて情熱的でパワフルで、だけど女や金銭についても刹那的で破滅的。普通には生きられないけれど、それでも別に悪人というわけではない。ただ、道徳や倫理に縛られた価値観ではちょっと理解しがたいというキャラクターです。
私などは、そういう生き方が少し羨ましく感じます。
合わせて読みたい「これは作り話だ!」自分の伝記に不満?野口英世がとった意外な反応
参考資料
・渡辺淳一『遠き落日』(1982年・角川文庫)
・星亮一『野口英世の生きかた』(2004年・ちくま新書)
・中山茂『野口英世』(1995念・岩波書店)