狭くても殿の近くに…利益より豊臣秀吉への忠義を重んじた武将・石田三成のエピソード:2ページ目
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「この若造が調子に乗りおって……いったい何十万石なら満足なんじゃ!?」
37万石が気に入らなければ50万石、いやそれとも100万石か……どれだけ欲張るのか、むしろ一興と試した秀吉に、三成はこう答えました。
「いや、むしろ加増は結構にござる。それよりも、それがしが九州へ行ってしまったら、いざ有事に誰が殿をお守り申すか?」
三成にとって大切なのは、自分が領地を広げ、財産を蓄えるより、秀吉の側近く仕えて忠義を尽くすこと。遠くの広い領地よりも、狭くても秀吉のそばにいたい……それが偽らざる本心です。
「いかにも考え足らずであった……わしは大事な懐刀を、うっかり遠くにしまい込んでしまうところであった」
「御意」
反省した秀吉は三成の忠義に対して他の形で報いることとし、三成はより一層の忠義をもって秀吉に奉公したのでした。
終わりに
カネさえくれれば誰にでも尻尾を振るなんて武士じゃない。たとえ給料が少なくても、秀吉だからこそ忠義を尽くしたい。
そんなどこまでも真っ直ぐな三成ですが、その真っ直ぐさゆえに処世術に疎く、自分の勢力を固めていなかったため、秀吉の死後、徳川家康(とくがわ いえやす)に滅ぼされてしまいました。
勤め先がどうなるか分からない昨今だからこそ、先立つカネは大切ですが、だからと言ってカネばかり追い求めると疲れてしまう……今回のエピソードは、仕事における実利と精神のバランスが大切なことを教えてくれます。
※参考文献:
- 安藤英男 編『石田三成のすべて』新人物往来社、2018年8月
- キッズトリビア倶楽部 編『1話3分 「カッコいい」を考える こども戦国武将譚』えほんの杜社、2020年12月
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