日本の象徴「桜」に深く関係!?古代日本人に崇められていた山の神「サ神」を知っているか?:2ページ目
山の神として古代日本人に崇められていた「サ神」というのが存在しており、それの宿る「クラ(座)」が「サクラ」だったというのです。
この説からイメージしていくと、日本人にとって桜とは春の農作業の始まりや五穀豊穣を象徴する樹木だった、ということになりそうです。そこで人々は桜に対して感謝の念を示し、お供えをして一年の豊作を願った……。
お花見は、貴族由来の習慣ではなく、全ての日本人の心に宿った古代からの習慣だということでしょう。
とてもいい雰囲気のイメージですね。
ただ、これは証拠が一切ありません。「サ神」説にしても、サがつく言葉をすべてこの神様由来とする点などが乱暴で、その真偽は判然とせず俗説の域を出ていません。
日本人の起源について、分かりやすく牧歌的なイメージを示されるとなんとなく無条件に納得しそうになりますが、証拠がない以上はあくまでもイメージに過ぎません。
むしろ、桜という樹木にそういうイメージを当てはめたくなる、私たち日本人の心性がそこには表れていると言えるでしょう。
江戸時代以降の「お花見」とその未来
一般庶民に、お花見の風習が拡がったのは江戸時代のことです。
江戸幕府は、上野公園や墨田川などに「桜の名所」を作っていますが、初期のお花見は大きな寺のような格式の高い場所で行われるもので、一般庶民向けのものではなかったようです。
落語の名作に『長屋の花見』というのがありますが、あの作品からも、花見というイベントが庶民にとっては高嶺の花だったことが分かりますね。
こうして見ていくと、お花見の習慣はもともとは高貴な、位の高い人たちだけが参加できるイベントで、それが俗化して現在のようなスタイルになっていったことが分かります。
しかしコロナ禍の現在、大勢で集まって宴会を開くというスタイルを通すのも難しくなってきています。
もしかすると、お花見というイベントそのものが、贅沢な過去のものとして記録されるようになる日が来るかも……!?
参考資料
火田博文『本当は怖い日本のしきたり』(彩図社・2019年)
奈良時代から続く春の楽しみ 桜と花見の歴史
にほんご日和「日本の花見の由来。起源は奈良時代の梅だった!」
日本気象協会 tenki.jp「天下の俗説「サ神」信仰の矛盾とは?和風月名「皐月(さつき)」考」