最期まで大志を諦めない!天下の義将・石田三成がリクエストした「最後の晩餐」とは?:2ページ目
最後の最期まで諦めない!
さて、打つ手もないまま夜が明けて、いよいよ処刑場へと護送される三成。
「……喉が渇いた。おい、湯はないか」
水だとまた腹を冷やしてしまうのでそう言ったのでしょうが、屋外でそんな気の利いたものは手に入りません。
「湯を沸かす暇(いとま)はないから、この干柿をやろう。食えば少しは喉も癒えるぞ」
護送の兵士が三成に干柿を渡しますが、今度は三成がこれを辞退します。
「いや、干柿は痰(たん)の毒になるから要らぬ。心遣いだけ受け取ろう」
痰の毒とは、現代で言うところの喘息(ぜんそく)や呼吸器系の病気を言うのでしょうが、確かに干柿を食べると痰が出やすくなりますね。
これを聞いて、兵士は苦笑い。だって今から死ぬのに、身体の毒だの何だの言っても始まるまい……しかし三成は言いました。
「そなたの如き小身なれば致し方あるまいが……天下に大志を抱く者は、たとい首を刎ねられるその瞬間までも、我が身と命を大切にするものぞ。最後の最期まで、諦めてはならんのだ」
「へぇ、さいで」
三成の言葉がどれだけ響いたかは知りませんが、そのまま三成が斬首され、その首級が獄門にかけられたのは広く知られる通りです。
ちなみに、干柿が呼吸器系に悪いというのは完全に誤解だそうで、柿にはビタミンAやビタミンC、カリウムが多く含まれ、また、表面に白く生じるマンニットという成分は咳止めに効果があるとのこと。
もしかしたら、干柿を食べると痰が多く出るからよくないと思ったのかも知れませんが、痰は体内の毒素を排出する作用であり、むしろ身体の健康を保つ上で必要な防衛機能。無理せず吐いた方がよいのは言うまでもありません(TPOには留意の上で)。