長瀬智也 主演ドラマ「俺の家の話」最終回で、舞われた能「隅田川」の話をわかりやすく解説:2ページ目
能・隅田川の後への影響
一般的にこのように愛するものを探して、その本人が気がふれてしまうというものを“狂女物”と呼びます。
“狂女物”の“狂女”は、いわゆる病としての“狂い”ではありません。能の「物狂い」は恋愛や慕情がこらえきれないほどの状態を表すものであり、普通は最後には探していた相手と再会し、ハッピーエンドで終わるのが普通です。
しかし『隅田川』に関しては悲しい結末で終わります。
この能「隅田川」はハッピーエンドで終わらないということが影響したのでしょうか、そののち歌舞伎や人形浄瑠璃でストーリーの形を変えながら、数多く上演していくことになります。
まとめ
長瀬智也主演の「俺の家の話」は人間国宝の“能楽者”である“父”と、潜在的に能の才能を持つ長瀬智也演じる息子との話です。
長瀬智也演じる息子は、幼い頃からの父親からの能の稽古で一度も褒められたことがありません。結局そのことがもとで、息子は父と唯一対等に話ができたプロレスの世界に身を投じます。
しかし、父親の余命が短いことを知り、父の介護をするために息子は家に戻り、父の介護をします。長瀬智也演じる息子にも発達障害の子供がいますが、その息子は“能”に興味を示し、能に才能を開花しはじめます。
“梅若丸”は母が自分を見つけてくれたことで、一度は姿を見せますが、成仏して姿を見せることはありません。
「俺の家の話」でも、最終回で主人公演じる長瀬智也はプロレスの怪我がもとで亡くなります。
しかし、長瀬智也の姿は父親には見えるのです。
けれども長瀬智也演じる息子は“何故父は能の稽古で一度も褒めてはくれなかったのか”という気がかりが解消できると、今まで父親には見えていたその姿は成仏して消えてしまいます。
納得できない、気がかりのある親子関係で苦しむ人は沢山いますが、その気がかりの本当の意味を理解できた時、息子は、もしくは人は成仏してこの世から姿を消すことができるのです。
そういった意味で、能の「隅田川」が、「俺の家の話」で演じられたのではないかと思うのです。
そして長瀬智也の引退に「俺の家の話」をかぶせたのではないでしょうか。
個人的には、また新しい長瀬智也の俳優としての姿を見たいと切に願います。