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”盛る”という言葉の語源は?「山盛り」ご飯にみる日本人の食への想い

”盛る”という言葉の語源は?「山盛り」ご飯にみる日本人の食への想い

昔の人は、食べ物を高~く盛っていた

さて、先ほど「盛る」という言葉を辞書で引くと「高く盛り付ける」という意味があることが分かると書きましたが、これも日本人の食にとって重要なポイントのひとつです。

有名な『魏志倭人伝』には、「(倭人は) 食飲するに籩豆を用い手食す」とあります。「籩豆」の「籩」は竹製の高坏で「豆」は木製の高坏のことだとされています(※諸説あり)。どちらも高坏なのです。

飲食物を「高く」「盛る」ことは、日本人にとってとても古い習慣だということが、このことから分かります。

先に、「盛る」にはご飯を神様に捧げる意味も含んでいると書きましたが、神様に供える「神饌(しんせん)」には、食べ物を高く盛り付ける「高盛り」にするものが多くあります。

また平安時代に正月に行われたとされる「歯固め」の儀式で使われたお供え物も、すべて「高盛り」です。『類聚雑要抄』によれば、この儀式では六本の高坏の上に皿を置き、そこにイノシシ・シカの肉、タイ・コイなどを山盛りにしたそうです。

さらに時代が下り、鎌倉時代の初期のものとされる『病草紙』の中の「歯の揺らぐ男」では平安末期の食事風景が描かれています。

これは歯の病気で悩む男の姿を描いたものですが、彼の前に置かれた四角の膳には、「高盛り」にされたご飯が見受けられます。他の食材も小高く盛られていますね。これが、当時の平均的な食事内容だったのでしょう。

また、室町時代のものとみられる『酒飯論』には僧たちの食事風景が描かれています。ここでもやはり、朱塗りの椀に白米を「高盛り」にして食べている姿が見受けられます。

さらに鎌倉時代や戦国時代の武士たちの食事風景を描いた絵でも、ご飯やそれ以外の食べ物が「高盛り」「山盛り」にされている例はたくさんあります。

そういえば、これは余談めきますが、テレビアニメ『まんが日本昔ばなし』でも、茶碗に白米がとんでもない高さで盛られた場面がよく登場しましたね。ちょっと大げさだったとはいえ、あの描き方には、実はちゃんと歴史的な根拠があったことが分かります。

3ページ目 ご飯を「高く盛る」「山盛りにする」理由

 

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