平安京は犯罪都市だった?平安時代の強盗たちの犯行記録から見えてくる人々の姿:2ページ目
能登観童丸(のとの かんどうまる)
3生年:康保4年(967年。30歳)
出身地:山城国
罪状:窃盗
盗品:1種類
被害金額:銭10貫相当
量刑:布80反1丈5尺&50反(追加)を盗んだ罪に換算
判決:流刑を加役(追加。あるいはグレードアップ)
盗品の内訳:
一、銀仏(しろがねのほとけ。仏像)×1体(銭10貫)
大神福童丸(おおみわの ふくわらわまる)
生年・出身地:ともに不明
罪状:窃盗
盗品:4種類
被害金額:銭15貫700文(※)相当
量刑:布125反5尺を盗んだ罪に換算
判決:流刑を追加
盗品の内訳:
一、白褂(しろのうちき)×1領(銭700文)
一、蒔絵櫛筥(まきえのくしばこ)×2合(銭10貫)
一、紫檀念珠(したんのねんじゅ)×1連(銭3貫)
一、綿×2屯(かたまり。銭300文)
(※)これも合計が合わない。誤記?あるいは念珠が本当は「五貫」?
菅野並重(すがのの なみしげ)
生年・出身地:ともに不明
罪状:強盗
盗品:3種類
被害金額:銭12貫500文相当
量刑:布190反3丈を盗んだ罪に換算
判決:記載なし
盗品の内訳:
一、馬×2疋(銭2貫)
一、銀造太刀×1腰(銭10貫)
一、胡籙×1腰(銭500文)
紀重春(きの しげはる)
生年・出身地:ともに不明
罪状:強盗
盗品:1種類
被害金額:銭2貫相当
量刑:布16反3尺を盗んだ罪に換算
判決:流刑
盗品の内訳:
一、絹×2疋(銭2貫)
【参考】
通貨:1貫=1,000文(1文の価値は時代によって大きく異なる)
布類:1疋=2反≒4丈(時代や素材によって異なる)
長さ:1丈=10尺=100寸≒3.03m(1寸≒3.03cm)
穀物:1石=10斗=100升=1,000合(1合≒150g)
以上10名を比べてみると、盗品も金額もさまざまですが、高価なものを効率的に盗む者がいる一方で、あれこれと欲張ってはみたものの、金額的には大したことのない「骨折り損」な者もいたようです。
その極めつけは津守秋方。彼に至っては逮捕や返り討ちのリスクを冒してまで強盗に及んだのに、奪ったモノは釜一つ(銭100文相当)という残念さ。
一方、大神福童丸は蒔絵櫛筥(銭10貫)や紫檀念珠(銭貫)などと言った高価で持ち運びやすいものを選んで奪っており、犯行前の下調べなど充分に行っていたであろうことが推測されます。
銀の仏像(銭10貫)を盗み出した能登観童丸もそうですが、名前から分かる通り彼らは寺院に仕えており、自分の身近に高級品がたくさんあることに気づき、欲に目が眩んでしまったのかも知れません。
他にも気の利いた者は多額(たいていは重くて多量)なものと同時に輸送&逃走手段として馬も奪っており(あるいは予め用意してあり)、こうした犯罪においても「仕事ができるorできない」の差は顕著に表れるようです。