音が聞こえる範囲は聖域。実は魔除けだった夏の風物詩「風鈴」には”流行り病”から守る力も:2ページ目
地域によって異なる風鈴
風鈴は地域によって個性が異なります。代表的なものをご紹介しましょう。
【ガラス製の「江戸風鈴」】
見た目も透明で涼しげなのがガラス製の「江戸風鈴」。長崎からガラスが輸入されてきた当時は、希少価値が高く現代の値段で200〜300万円ほどしたそうです。
その後、ガラスの普及に伴い徐々に値段は下がり、江戸風鈴が全盛期を迎えたのは明治20年代。東京の庶民が、家の軒先に吊るして楽しめるようになりました。
ガラスの音色を楽しむのはもちろん、夏場は流行病が蔓延しやすかったことから、平安時代と同様に「魔除け」「病除け」の効果も求め、魔除けの意味がある「赤色」の風鈴が多かったとか。
そして、時代と共に、赤色は暑苦しいので見た目も涼しげな透明地に金魚やお花などが描かれたものが人気となりました。
【鉄製の「南部風鈴」】
ガラスの江戸風鈴と並んで、有名なのが南部鉄製の「南部風鈴」です。ガラス風鈴と異なり、り〜んと長く響く澄んだ高音が特徴で、「残したい日本の音百選」に選ばれています。デザインもさまざまな種類があり選択肢も豊富です。
【そのほかの風鈴】
●小田原風鈴
小田原の伝統工芸、小田原鋳物で作られた風鈴。銅と鈴の合金「砂張(さはり)製」で、長く音色の余韻が残ります。
●明珍火箸風鈴(みょうちんひばしふうりん)
兵庫県姫路市で作られている金属製の火箸「明珍火箸」を使った風鈴です。澄み切った音色が美しく、アメリカの有名アーティスト、スティービー・ワンダーが「東洋の神秘」と絶賛したことでも知られています。
●別府竹風鈴
別府の竹細工で南部風鈴を包んだ伝統工芸品です。
●越前和紙風水母
越前和紙の丸い傘に包まれた「風水母(かぜくらげ)」。中空チタンの涼やかな音色が特徴です。