刺客となった悲劇の皇后!日本神話のヒロイン・狭穂姫命と兄の禁断の関係【下】:2ページ目
炎の中で生まれた子供
「おぉ……ついに我が子が生まれたか!」
出産を終えた狭穂姫命が再び城の上に姿を現し、赤子を抱いた侍女の一人が、垂仁天皇の元へやって来ました。
「主上……どうかその子は、その子だけは幸せにしてあげて下さいませ……!」
産後の疲労で意識も朦朧とする中、狭穂姫命は必死の想いで懇願します。
「もちろん……言うまでもない!しかし、この子の名前は何とつけようか!」
赤子を抱きしめる垂仁天皇に、狭穂姫命が答えます。
「炎の中で生まれた子にございますから、誉津別命(ほむつわけのみこと※3)となさいませ……!」
炎の中で生まれた、炎によって別(わか)たれてしまった二人の子供……その意味を悟った垂仁天皇は、残る未練に再び問います。
「そなたの結んでくれた下着の紐(=二人の絆と、それを失う悲しみ)は未だそのまま……これを一体、誰がほどいて(心の傷を癒して)くれるのか!」
「わたくしの姪に、兄比売(ゑひめ)と弟比売(おとひめ)という美しい姉妹がおります。わたくしと違って貞節な者たちですから、どうか末永くお慈しみ下さいませ……!」
「姫よ……我が君よ……!」
すると俄かに火勢が強まり、焼け崩れる稲城が狭穂姫命と狭穂彦王たちを呑み込んでしまったのでした。