ついに人間の世界へ(涙)江戸時代のみかん商人・長右衛門の小笠原漂流記【四】:2ページ目
順風満帆、ついに人間の世界(八丈島)へ
……さて、万全を期して造り上げた船は見事に航海を耐え抜き、その日の内に島から島(現:小笠原諸島・父島)への渡航に成功。自分たちの船が、ちゃんと海を渡れることが証明されたのです。
「やったぁ!」
今回の航海テストはみごと合格できたので、今度はより長い航海に耐えられるよう食糧の備蓄を増やし、航海中に感じた船の不具合を改良するなど、現地に6日間滞在。
誰もがみんな、一つの目標に向かって自分が出来る最善を尽くし、やりがいに満ち溢れていたことでしょう。
そして待ちかねた南風が吹いた4月16日にタイミングを逃すことなく出航、まさに順風満帆状態で翌17日の朝に小島(現:小笠原諸島・聟島列島)に到着。ここでは船のメンテナンスと食料調達のために2日間滞在します。
それから8日間の航海を経て、ようやく人が住んでいる八丈島に到着。
「人がおる、村がある……!」「ばんざーい!」
最後に港を出た1月5日以来、自分たち以外の人間を目にしたのは本当に久しぶりです。
「ところで、今日は何月何日じゃ?」
「日付も判らんようになりなすったか……まぁ随分とご苦労なすったようじゃの。今日は4月25日じゃ」
旧暦の1か月はすべて30日ですから、勘定すると実に110日(25日+30日+30日+25日)ぶりの接触となります。
もしかしたら、人恋しい感情さえ忘れかけていたかも知れませんが、人間社会に戻って来られた長右衛門たちの喜びは、想像するに余りあります。