3ヶ月ものサバイバル生活!江戸時代のみかん商人・長右衛門の小笠原漂流記【三】:3ページ目
いよいよ出航!長右衛門たちの運命は?
そして、いよいよ出航の時を迎えました。目指すは北西(※北東の誤り)に見える、あの島(現:小笠原諸島・父島)です。
「みんな……準備はえぇか?」
通常の航海であれば、その日の内に渡れる距離です。長右衛門たちの船がそれに堪えうるか否か、まさに「みんなの努力の試金石」と言えるでしょう。
「おぅ……親方、見ていてくれ!」
島の土となった勘左衛門に後ろ髪引かれる者もいましたが、ここで退いては男が廃る。親方に顔向けできません。
「よぅし……野郎ども、帆ぉ上げろ!」
「「「「おうっ!」」」
かくして寛文十1670年4月11日ごろ、勘左衛門の霊に見守られながら、長右衛門たちは島を後にしたのでした。
※参考文献:
田中弘之『幕末の小笠原―欧米の捕鯨船で栄えた緑の島』中公新書、1997年10月