平安最強!謎の黒づくめ集団を率いた平致経の要人警護が京都で話題に【後編】:3ページ目
終わりに・主従の絆
こうした水も漏らさぬ緊密な連携は、単に報酬や食い扶持で雇われただけでは築き得ず、恐らく幼少の頃より長く濃厚な時間を共に過ごし、致経の抱く大志や人生のビジョンを共有すればこそ成し得たのでしょう。
「俺たちみんなで致経を盛り立てるんだ!」
「……あぁ、アイツは俺たちがいないとダメだからな」
戦場でこそ「大矢」の二つ名で恐れられた猛者でしたが、日常ではどこかぼんやりとしていて、こと世渡りとなるとからっきしだった致経をみんなで支え、一廉(ひとかど)の侍にしてやろうと、黒づくめの旧友たちが一生懸命に支えた様子が目に浮かぶようです。
かつて歴史の表舞台で活躍した者たちの陰には、こうした無数の者たちの存在があり、彼らの働きによって多くの偉業が成し遂げられてきたのでしょう。
【完】
※参考文献:
菅野覚明『武士道の逆襲』講談社現代新書、2004年10月19日
福永武彦 訳『今昔物語集』ちくま文庫、1991年10月24日