[お江戸小説] ココロサク -くれない荘の仲間とおりん【プロローグ】
江戸時代は、はるか昔。そう思っている人は、多いかもしれません。特に、庶民の暮らしとなると、まったくの別世界というイメージでしょうか?
でも、意外と現代との共通点は多いのです。恋愛を謳歌するし、甘味も大好き。メイク術やファッションを本で研究するのも、私たちと同じ。ちなみに、男女問わずモテるのは、粋な人だったそう。
貧しくても、日々を楽しみ、困ったときは助け合う。そんな庶民の心は、長屋にも根付いていました。表の通りには店(表店)があり、その奥にあったのが裏長屋(裏店)です。数軒の住居が連なっており、トイレは共同だし風呂はない。声は筒抜けでプライバシーなんぞ、ないに等しいもの。便利でも清潔でもないけれど、ワイワイと賑やかな日々を過ごしていたようです。
さてさて、長屋暮らしがどんなものか、ちょっと覗いてみませんか?
ココロサク~くれない荘の仲間とおりん~ プロローグ
「おめえさん、また女に手ぇ出したね!」
「もうしねぇよ、許しておくれ~。」
隣の家から、おすみさんの怒鳴り声が聞こえてくる。また良吉さん、性懲りもなく……。
聞き耳を立てているのかって?そんな野暮なことはしないよ。でも、この裏長屋で暮らしていると、聞こえちまうんだ。なんせ、薄い壁板一枚隔てているだけなもんで。朝の怒鳴り声も、夜のあの声も、全部聞こえちまう。
おっと、失礼! 自己紹介していなかった。私は、おりん。母さんと2人で、ここ、くれない荘で暮らしてもう数年。寺子屋を卒業してからは、水茶屋で働いてるよ。最近、気になるお客さんもできてね。その話も、今度聞いておくれ。私の自慢の母さんは、呉服店で仕立て職人として活躍中!くれない荘の仲間も、みんないい人ばかり。
長屋暮らしについて、もっと知りたいって?どんと、こい。
「くれない荘へようこそ!」
次回、一話へつづく
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