まさに移動式スーパー!江戸時代の移動販売「棒手振り」には社会福祉の役割もあった
買い物に行かなくても、家のそばまで売りに来てくれる店があったら、とても便利ですよね。八百屋さんや魚屋さんがお得意先の家を回るのは昔からありましたが、最近ではスーパーやコンビニまでもが、車などを使って移動販売をするようになりました。
そうした販売方法は現代になってから、商店の少ない住宅街や過疎地などに行くために生まれたと考えられがちですが、江戸時代の都市部では「棒手振り」という移動販売が生まれ、重宝がられていたのです。
独身男性のご飯は、棒手振りにお任せ!
人口密度が世界一だった江戸には数多くの男性労働者がいましたが、大半が出稼ぎや単身赴任者、ないしは独身者でした。つまり、家族やお手伝いさんなどに家事をしてもらえる男性はなかなかおらず、調理済み食品の需要が高まっていたのです。
そこで不可欠だったのが、棒手振りでした。彼らは店舗を持たず、天秤棒の両脇に商品を吊り下げて売り歩けるのが利点です。そのため、棒手振り商人は庶民の住む長屋や、下級武士の住まいなどを主な商売の場所にしていました。
独身の男性にとって、ご飯のおかずやその原料である生鮮食品を家の前まで売りに来てくれる棒手振りは、有り難い存在であると同時に朝の慣例となります。
『納豆と しじみに朝寝 起こされる』
和朝食のレパートリーであるシジミ汁と納豆は江戸期から健在であり、納豆屋さんと貝を売る魚屋さんが重宝されていました。
この川柳では、棒手振りの売り声に朝寝を邪魔されたとぼやいており、「なっと、なっとー。叩きなっとー」「しじみよー、しじみよー」と、決まった時間帯に声を発して売り込んでいたため、少々うるさいが時報を知らせる人として親しまれてもいたようですね。
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