日本の山奥でアートする ダーリンは外国人
過疎と高齢化が進んでいる日本の地方に住み着いて、日本の伝統的な手仕事や思想を深めるという外国人がけっこういますよね。彼らは職人だったり、お坊さんだったり、日本で廃れてしまったことに新鮮味を感じて挑戦している人達です。中には外国人ながらすっかり土地の名士になって、地方のマスコミの常連になっている人もいます。
例えば高知県の深い深い山奥、梼原町に住んでいるオランダ生まれのロギール・アウテンボーガルトさん。彼は立派な土佐和紙職人、「土佐の匠」として県内では知らない人はいないくらいのアーティストです。ロギールさんの代表作はかずらの骨格に手すきの和紙を貼った明かり。この作品は今では高知県の代表的な工芸品の一つにもなっています。
和紙というのは水がキレイじゃないと作れません。高知は四万十川や仁淀川が清流として有名ですが、こうした清流の源流とも言うべき山奥にあるのがロギールさんの住む梼原町です。かなり過疎も進み、人口はおよそ3,800人(2012年現在)。四国ですが山間部なので、冬は厳しい寒さに襲われます。
ここにはスタバもユニクも、都会にあるものは一切ありません。素朴で単純な田舎のくらしが、時間を経てそのまま保存されている、ただそれだけ。日本に魅せられた外国人から見れば、観光地化した京都や東京の下町では物足りなくなり、そうなったらド田舎の限界集落の方が魅力的に映ってしまうのでしょう。
こうした筋金入りの日本好き外国人アーティストをまとめて誘致しているのが、徳島県の神山町。こちらは街のアートイベントで展示する作品を制作する代わりに、過疎で空き家になった家を安く貸しだすという企画「アーティスト・イン・レジデンス」という取り組みを10年以上前から行なっています。毎年前衛的な作品が生まれて、田んぼや道沿いに展示され、山間の町が美術館になってしまうのです。
田んぼの脇に展示された作品 神山の風景に溶け込んでいます。
「日本昔ばなし」みたいな風情の残る日本の山奥には、鬼ではなく、青い目のアーティストが住んでいて、しかも町おこしをしてくれているのです。これも日本の新しいメルヘンなのかもしれませんね。この秋、日本の田舎にアートを探しに出かけてみませんか?