窮地の夫を見捨てるなど…武士道エピソード集『葉隠』が伝える「女の道」とは
昔はとかく女性の地位が低く抑えられ、自分で人生を決められなかったように思われがち。しかし彼女たちも時により、自分の意思と覚悟で人生を決める事例が間々ありました。
そこで今回は江戸時代の武士道エピソード集『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』より、とある武家女性のエピソードを紹介。果たして彼女は、どんな決断を下したのでしょうか。
窮地の夫を見捨てては、女の道が立ちませぬ
今は昔し、武雄に立野甚五太夫(たての じんごだゆう)という武士がおり、河原勘左衛門(かわはら かんざゑもん)の妹を娶っておりました。
二人の娘はやがて中村平六兵衛(なかむら へいろくひょうゑ)に嫁ぎ、幸せに暮らしていたようですが、後にこの平六兵衛が主君に対して不忠の罪(詳細は不詳)に問われます。
これを知った勘左衛門は、不忠義者と縁続きなどかなわぬ……と妹を離縁させて河原家に連れ戻し、姪に当たる甚五太夫の娘も引き取ろうと声をかけました。
「平六兵衛父子は不忠の罪ゆえ、こたび流刑と相成った。しかしそなたまで巻き添えを食う事はない。姪を不憫に思う伯父の意を酌み、ただちに離縁して河原家へ参れ」
しかし甚五太夫の娘は毅然とこれを断ります。その言い分は、
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