屋根より高く、青空いっぱい……端午の節句に凧揚げをする鎌倉の地域文化を紹介:2ページ目
子供が元気に育つように……鎌倉の凧揚げ文化
鎌倉の凧揚げは、地元で生まれた子供の初節句(生まれて初めて迎える端午の節句)をお祝いするために行われ、前年の端午の節句以降に男児が生まれた家の者が、あるいは近所の若い衆にご祝儀を与えて揚げてもらうものでした。
凧揚げは沿岸地域(由比ガ浜、材木座、坂ノ下など)や、内陸部の広大な田園地域(大船、深沢など)を中心として、お祝いは各家庭だけでなく地域全体で行い、揚がった凧の下で四斗樽を抜いてみんなで酒盛りをしたそうです。
凧のサイズは大きなもので三十帖(約55畳)、子供でも一帖から三帖のものを手作りしたそうですが、一帖は128cm×180cmと言いますから、かなり巨大な凧だったようです。デザインは大抵「祝」と大きく書いたいわゆる字凧で、子供の幸福を願って揚げられたことが判ります。
巨大サイズの凧には地曳網のロープを凧糸に使い、若い衆が30人くらいがかりで揚げ、下ろす時はカグラサン(※漁船を陸に曳き揚げる人力ウィンチ)を使って巻き取りました。
ちなみに、令和の今日ではお正月にも凧揚げをしますが、鎌倉でお正月の凧揚げがメジャーになったのは戦後(昭和20年代)とのことで、古老の話によれば、昔は端午の節句に学校で紅白の打菓子(落雁のようなもの)を貰ったら、家に帰って凧揚げをするのが何より楽しみだったそうです。
終わりに
「この凧揚げの歴史を伝承して、現在も五月節句の子どもの日には、由比ヶ浜で凧揚げ大会が行われている。風にのって青い空へとんでいく凧、うまく揚がらないときは紙が破けたり、骨を折ったり、お日さまにとどくほど揚げてみたいもいう子どもたちの夢は、『風の又三郎』の世界である」
※大藤ゆき『子どもの四季 鎌倉風物詩』83頁より。
鎌倉市では昭和四十一1966年から毎年、5月5日の端午の節句に子どもたこあげ大会を開催しており、誰でも参加できるようになっています。
筆者も子供の頃から参加しており、みんなそれぞれ手作りした凧が揚がるかどうか、友達と楽しみにしていたものでした。
青空いっぱいに揚がる凧のように、みんな健やかにのびのび育って欲しいと願っています。
※参考文献:大藤ゆき『子どもの四季 鎌倉風物詩』新樹社、1994年