生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその1「百日紅」:2ページ目
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何がすごいって、画面の描き込みがすごい
何がすごいって、画面の描き込みがすごいんです。
破れた壁、火鉢、煙草盆、硯、絵筆、描き損じの山・・・「日向子サン、さっきまで北斎の長屋に居たンでしょう」と言いたくなるほどの緻密な風俗描写。
1作品読み終わる頃にはアナタも江戸風俗ツウになってしまっているかもしれません。
ロングセラーのワケは「等身大の江戸ッ子」
本作品は、お栄が父・北斎を目指して苦難を乗り越え絵師として成長する・・・というような分かりやすい青春熱血マンガではありません。にもかかわらず長年愛され続けているのは、江戸ッ子流の「意気地(いきじ)」や「艶(つや)」、更には「諦観」がそこにあるからでしょう。少女マンガの主人公みたいな上昇志向やキラキラ感はないけれど、お栄にはお栄の意気地がある。
大成功して皆が羨む完璧な絵の巨匠なんかじゃなくて、北斎には北斎の諦観がある。映画みたいな大恋愛はないけれど、江戸の男女のニクい色艶がある。
そして彼らの感情をいちいちクドクド説明する事なく、読者に想像で読ませる俳句的な余白がある・・・。丹念に描かれる等身大の江戸ッ子の姿こそ、杉浦作品が大人に愛される大きな理由のひとつ。
ぜひ皆さんも、杉浦日向子ワールドにどっぷりハマってみてくださいね。
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