藤原彰子はなぜ「しょうし」って読むん?やんごとなき女性たちの秘すべき「忌み名」とは?:3ページ目
やんごとなき女性の秘すべき「忌み名」
元来、本名は諱(いみな)と言って「忌み名」に通じ、ごく親しい相手以外には知られないようにする習慣がありました(宗教的な理由など、諸説あります)。
また、たとえ知っていても日常場面では呼ばず、宮中では女房名(にょうぼうな)と呼ばれる通称を用いるのが一般的でした。
例)有名なところでは清少納言、紫式部、赤染衛門など。
そして、万が一(書面などで)本名を見られてしまった場合でも、部外者に判りにくい読み方であれば、諱を守り通せると考えたのかも知れません。
そういう意味では、近代国文学の知恵である女性名の音読みも、知ってか知らずか「忌み名」の精神を継承していると言えるでしょう。
まとめ
よく家系図などで、女性の名前が判らず、ただ「女」とだけ記されていることがあり、それを「女性が差別されていたからだ」と解釈されることがあります。
しかし、もしかしたら逆に大切な存在だからこそ、外部の目に触れやすい場所(文書など)ではその諱を伏せ、守ろうとした可能性もあります。
(※じゃあ「何で男の名前は公開されるの?」という疑問が生じますが、恐らく「男は矢面に立って、大切な女性を守るべし」という考え方があったのでしょう)
結局のところ「藤原彰子」は「しょうし」なのか「しょうこ」なのかハッキリとしませんが、彼女の「忌み名」は、このまま知られぬままの方がよいのかも知れません。
※参考文献:榎村寛之『斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史』中公新書、2017年9月25日