極限で問われる武士の真価!テロに屈せず人質も見殺しにしない源頼信が示した「兵ノ威」とは(上):2ページ目
救出は難航、打つ手なし
さぁ、困りました。
とにもかくにも報告せねば、と家来の一人が帰って来ると、ちょうど親孝も帰宅していました。
「大変です!逃げ出した盗人が、若君を人質にとって立て籠もりました!」
【原文】「若君ヲバ盗人(ぬすびと)質(しち)ニ取リ奉リツ」
それを聞いた親孝、慌てふためきながら現場に急行してみれば、確かに捕らえた筈の盗人が、厳(いつくし=慈し)い我が子に白刃を突きつけています。
一瞬、目の前が真っ暗になった(見ルニ目モ暗レテ、為ム方無ク思ユ)親孝ですが、そこは「極タル兵」の意地、どうにか我が子を奪い返してやろうとにじり寄るも、
「近寄るな!近寄ったらガキを突き殺すぞ!」
【原文】「近クナ寄リ不御座(おはしまし)ソ。近クダニ寄御座(よりおはしまさ)バ突キ殺シ奉ラムトス」
と凄まれてしまっては、どうすることもできません。
「あぁ……我が子を殺されてしまったら、こんな盗人ごときズタズタに切り刻んだところで、いったい何になると言うのだ……」
【原文】「現ニ云(いふ)マヽニ突キ殺(ころし)テバ、百千ニ此奴ヲ切リ刻(きざみ)タリトモ、何ノ益カハ可有(あるべ)キ」
途方に暮れてしまった親孝は、家来たちに「逃げないよう、遠巻きに囲っておけ」と命じておき、自分は国司の館へ急行しました。
こうなったら、もう頼信を恃むよりなかったのです。