清少納言も食べていた!?夏の風物詩「かき氷」は平安時代は貴族たちの特権だった:2ページ目
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食べるだけではなく、身体を冷やすために
また、「源氏物語」にも氷に関する描写があります。「宇治十帖」の「蜻蛉巻」で、薫が女一の宮を垣間見る場面で、
氷を物の蓋に置きて割るとて、もて騒ぐ人々、大人三人ばかり、童とゐたり。唐衣も汗衫も着ず、みなうちとけたれば、御前とは見たまはぬに、白き薄物の御衣着たまへる人の、手に氷を持ちながら、かくあらそふをすこし笑みたまへる御顔、言はむ方なくうつくしげなり。
「源氏物語」(校訳・注:阿部秋生・秋山虔・今井源衛・鈴木日出男「新編日本古典文学全集」/小学館)
氷の塊を割るために物の蓋に置いて騒ぐ女房の様子や、暑さで唐衣や汗衫(それぞれ女房と童女の装束で、主人の前では着用しているのが普通)を脱ぎ捨ててくつろいだ姿でいる様子などを描写した場面です。
主人である女一の宮も手に氷を持って涼んでいる様子。その後にも、
心づよく割りて、手ごとに持たり。頭にうち置き、胸にさし当てなど、さまあしうする人もあるべし。
「源氏物語」(校訳・注:阿部秋生・秋山虔・今井源衛・鈴木日出男「新編日本古典文学全集」/小学館)
と、あまりの暑さに耐えかねて辛抱強く氷を割り、女房たちは頭にのせたり胸にあてたりとみっともないまねをするものもいるほど。
平安貴族の女性というと上品な立ち振る舞いのイメージがありますが、暑い夏はさすがに現代人のように服装を崩し、だらけて過ごしていたことがわかる描写です。
ここに登場する氷も、貴重なものです。主人は女一の宮。つまり皇女ですから、朝廷からの献上品かもしれません。一般庶民にはとても真似できない、貴族だけが許される夏の暑さ対策でした。
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