与謝野晶子「みだれ髪」女性による赤裸々な恋の歌は当時の評論家の間で大炎上!?:3ページ目
保守的な時代に大胆な恋を歌い上げた、与謝野晶子『みだれ髪』
さて、古典文学を通して恋愛への憧れを抱くようになった晶子は、21歳の時に和歌の師匠・与謝野鉄幹と出会い、恋に落ちます。鉄幹には既に妻があり、更に晶子と同じ女流歌人で彼に思いを寄せる恋敵もいました。
しかし晶子は、自分の気持ちを諦めませんでした。
彼女は鉄幹に思いを届ける大胆な「恋歌」を、彼の主宰する文芸誌『明星』に投稿し続け、挙句の果てに大阪の実家を飛び出して彼と結婚。その時に鉄幹が晶子に勧めたのが、晶子が彼に送った激しい恋の歌をまとめた歌集『みだれ髪』の出版でした。
やは肌の あつき血汐に ふれも見で さびしからずや 道を説く君
くろ髪の 千すじの髪の みだれ髪 かつおもひみだれ おもいみだるる
人の子の 恋をもとむる 唇に 毒ある蜜を われぬらむ願い
このような晶子の大胆で激しく赤裸々な恋の歌の数々は、当時の若者たちの絶大な人気を得ました。しかし同時に、保守的な評論家たちからは「女性が堂々と恋愛を歌うなんてけしからん!」と激しい批判も浴びました。
『みだれ髪』は、与謝野晶子が亡くなった後も彼女の代表作として生き続けました。自分の作品が炎上したり、批判を浴びたりすることは、決して嬉しいことではありません。しかし炎上するほどインパクトを与える作品には、批判する人と同じかそれ以上の数のファンがつくのは、今も昔も変わらないようですね。