リーゼントだるまに乗っ取られる町を描く、ちょっとシュールな絵本「だるまだ!」が面白い
海を渡ってやって来た「だるま」が町に侵襲?
「だるま」と言えば、高崎や川崎大師、浅草などの観光名所で売られる民芸品で、選挙や受験の必勝や1年の幸せを願って目を描き入れる縁起物。近年では様々なキャラクターを模した、かわいらしいだるまも増えています。
そんなだるまが大量発生して町を占領したら・・・?
にわかには想像もできないシチュエーションを描いた絵本が、『だるまだ!』です。
非常にシンプルなタイトルですが、表紙からして何かが起こりそうな印象ですね。
だるまがいっぱいのシュールなストーリー
お話はは海のはるか彼方から、赤い何かが流れてくるシーンで始まります。
赤い何かは、リーゼントを決め込んだ「だるま」の大群でした。彼ら(?)は次々に「ざざざっ、ざざざっ」と陸に上がりました。
海辺の町の人たちは、なぜかみんなだるまを持ち帰ります。
このページには「ひとりが だるまをもちかえるのをみて たくさんのひとがそれにつづきました」との一文があるだけですが、絵を見ると、人によっては抱えきれないほど大量のだるまを持ち帰っていることが分かります。
「ただでもらえるものは、何でももらえるだけもらおう」と考える人はどこにでもいるものですが、こうしてだるまは町中に広がっていくことになります。
そして「だるま」として飾られるだけでなく、ボクシングのグローブにされたり、犬のオモチャにされたり、屋根の瓦にされるなど、本来の用途とは違った使われ方もするようになっていきました。
そうやってだるまが町を占領したある日、今度は空からパラシュートを付けた「白い何か」が飛んできます。
何とそれは、小判を抱えた招き猫の大群。
この町は、今度は大量の「招き猫」に占領されてしまうのでしょうか?その答えはまだ誰にも分からないという、意味深なラストシーンでお話は幕を降ろします。
この絵本の作者は?
この絵本の作者は、岐阜県生まれの絵本作家・イラストレーターの高畠 那生(たかばたけ なお)さん。
本作の他にも『ぼく・わたし』『カッパのあいさつ』『さるかにがっせん』など多数の絵本を世に送り出し、『カエルのおでかけ』では第19回日本絵本賞を受賞しています。
『だるまだ!』で町を占領しただるまと、ラストで空から降って来た招き猫のその後が描かれた続編『まねきねこだ!』は、2017年7月に刊行されていますので、こちらも必見ですね。