負けても死んでもへこたれない!出雲の神・大国主命の冒険は波乱万丈:2ページ目
力の無さは知恵と人柄でカバー!根の国の大冒険
根の国へ行った大国主命を出迎えたのはスサノオの娘であるスセリ姫で、彼女と大国主命はすぐさま恋仲になります。娘が若造にぞっこんなのが寂しいと言うか、つまらなかったのでしょうか。スサノオは大国主命を「こいつは地上から来た不細工男、葦原醜男(アシハラシコオ)だ」と見下した態度を取り、蛇のいる洞穴に泊まらせます。
そうした父親の仕打ちに反発したのが親譲りの勝気さを持つスセリ姫で、彼女は蛇を大人しくさせる領巾(ひれ)、ショールのような布を大国主命に与えます。次の日にハチとムカデの部屋に入れられた時も毒虫に対処できる領巾を差し入れて、父神の悪だくみを頓挫させてしまうのです。
ここまで読み進めると、大国主命は武勇らしきものを発揮していないどころか、その心優しさに惹かれた周囲の人々や生き物に救われ、ヒントを与えられてひらめいているのに気が付きます。大国主命は、少々頼りなくても人柄・仁徳で周囲の助力を得て勝ち進むヒーローの先駆けでもあるのです。
スサノオを出しぬけ!根の国からの大脱走
さて、弱虫でお人好しの男が娘の彼氏で、脅しても怖気付く気配もないのを見たスサノオは音を発して飛ぶ矢、鏑矢(かぶらや)を大国主命に探させ、彼を焼き殺してやろうと火攻めを決行します。しかし、ここでも大国主命を慕うネズミが味方したために暗殺計画は失敗してしまいます。
スサノオは更なる嫌がらせとして、自分の頭に巣食うムカデを取って噛み潰させますが、スセリ姫が『赤土とムクの実を噛み潰して吐きなさい』と入れ知恵したために大国主命は、毒のあるムカデを噛まずに済みます。
そうとは知らぬスサノオは、“オレ様の娘といちゃつく生意気な若造”と蔑んでいた大国主命が従順だと思いこんで寝てしまうのでした。乱暴でワガママなスサノオが眠りこけたのを見たスセリ姫は、父の宝である剣・弓・琴を持った大国主命と共に駆け落ちを決行します。
スセリ姫という強力な助っ人を得て宝物まで手にした大国主命は、かつてのようないじめられっ子ではありませんでした。こうして、多くの人を味方にしてしまう仁徳という最強の武器をフル活用した、大国主命の反撃がスタートしたのでした。