一泊900円!格安宿屋”木賃宿”は江戸時代の旅行ブームを支えた縁の下の力持ちだった:2ページ目
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弥次喜多コンビも利用した木賃宿。でも、毎度おなじみの騒ぎを起こしていた!
『東海道中膝栗毛』には各地で利用した旅籠の様子を細かに記した描写が多いですが、主人公である弥次郎兵衛と喜多八も路銀を盗まれて困窮し、蒲原(静岡県蒲原町)で宿にしたのが一軒の木賃宿です。
畳4~5畳分の一間に仏壇と破れたつづらがある、これこそ農家を改築したような宿を老夫婦が経営し、そこには六部(66か所の聖地を巡る行者)の男性、巡礼の老翁とその孫娘が囲炉裏で温まる様子は、木賃宿の様子を緻密に伝えています。
この木賃宿のくだりでは、『風が吹けば桶屋が儲かる』のことわざを実行した六部、雷様を娘婿にしたら人間の孫娘が生まれて嘆く老巡礼の打ち明け話、二枚目だがうぬぼれ屋の喜多さんがナンパに失敗するなど、膝栗毛名物の嗜虐に富んだ笑いが満載です。相部屋の木賃宿だからこそ生まれた、屈指の名シーンと言えるでしょう。
江戸時代、とくに後期は空前絶後の旅ブームを呼んだ時代でもありましたが、その背景には武士や商人のように潤沢な資金が無くても宿泊できる木賃宿の存在があったことは無関係ではありません。
そうした木賃宿は明治以降、簡易宿所として営まれますが、スラム街などに多く建てられて浮浪者などがたむろする場所となり、イメージが低下してしまったのは、少し寂しいものがありますね。
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