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お米を一日に4合も?宮沢賢治の名詩「雨ニモ負ケズ」に描かれた近代日本の米食文化

お米を一日に4合も?宮沢賢治の名詩「雨ニモ負ケズ」に描かれた近代日本の米食文化:2ページ目

お米を一日に4合も食べる理由

一節の中で気になってしまう点のひとつが、米の量です。1合は180㏄なので4合は720㏄となり、かなりの量になってしまいます。しかも宮沢賢治は、病弱で小食な傾向にあったのになぜ?と疑問は尽きませんが、実は、この量は当時の労働者が食べていたお米の量と関係があるのです。

現代ではおかずとご飯をバランス良く食べるように教育されますが、当時の貧しい農村部では副食が貧弱でした。酵素が入っていて消化を助ける塩辛い味噌や、安価な野菜のように少ないおかずで大量の玄米ご飯を食べ、お腹を膨らませつつ栄養バランスも摂るのが当たり前だったのです。

肉体労働の多い農家や商工業に従事する者、兵士などは貧弱な副食を補うため、4合どころか6合も食べることはざらでした。面倒臭い手作業や農業をしなくても6合のお米が食べられることを理由に、兵士や出稼ぎ労働者になる人もいたほどなのです。むしろ、賢治が詩に読み込んだ米の量は多くないとさえ言えます。

裕福な家に生まれ育ち、教養豊かな才人としての才能を発揮して農村を救おうと志した賢治の思いが天に通じたのか、技術が進んだ現代では6合もの玄米ご飯を詰め込まなくても栄養のバランスが取れますし、飢餓に苦しむこともありません。

しかし、つい100年ほど前までは米飯をわずかなおかずで食べる食事スタイルが存在したのです。美味しいお米を味わいながら、そうした幸せを噛み締められる世の中を作ってくれた人々に思いを馳せながら秋を過ごすのも、筆者は決して無意味ではないと思います。

 

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