四季よりも細かく…1年間を24個に分けた日本の季節「二十四節気」とは?
太陰太陽暦と太陽暦
古くから暮らしに欠かせないものであった暦(こよみ)。世界各地、それぞれの時代に使われた暦があり、時には趣向を凝らして楽しまれてきました。錦絵による絵暦は、江戸っ子の楽しみの一つでもあったそうです。
中国から日本に伝わった暦は「太陰太陽暦」でしたが、太陽暦とのズレがありました。江戸時代には、ひと月の長さは太陰暦、1年の長さは太陽暦によるものだったため、つじつまが合わなくなり、閏月をはさんだり、1年が13ヶ月だったり、暦の調整は大変ややこしいものでした。
四季よりも細かく分けられた日本の季節
暦と季節が大きくずれないように調整するために登場した二十四節気(にじゅうしせっき)は、1年間を24個に分けた季節のこと。地球を中心に太陽が1周する、1年の太陽の黄道上の動きを15度ごと24等分して決められています。
二十四節気での一つの季節は約15日間。1年間を冬至・夏至・春分・秋分で四季に、さらにそれぞれを6等分して24の季節に分けて、立春から始まり、大寒で1年を終えます。「節(せつ)または節気(せっき)」と「中(ちゅう)または中気(ちゅうき)」と呼ばれる2つの季節が交互にあります。
立春・立夏・立秋・立冬を含むグループが「節」の季節で、暦の上では○月節、冬至・夏至・春分・秋分を含むグループは「中」の季節で、○月中と表記されます。
例えば、春の二十四節気で1つ目の立春は「正月節」、2つ目の雨水は「正月中」、3つ目の啓蟄は「二月節」、その次の春分は「二月中」と暦の上で表されます。
年々ずれていく暦と季節とのズレを調整するには
太陰太陽暦を元とする二十四節気は、中気のない季節が閏月とされ、その年によって1日程度前後することがあります。複雑に変化する二十四節気は、毎年ほぼ0.2422日(6時間弱)ずつずれていき、さらに±15分の変動もあるため、暦の日付と季節がどんどんずれていくこととなってしまいます。二十四節気の複雑な変動を調整するため、4年に1度うるう年を入れることで暦との差が大きくならないようにしています。
二十四節気をさらに3つずつの季節に分け、1年を72等分したものは「七十二候」と呼ばれます。また、二十四節気を補う季節の移り変わりの目安として「雑節」があり、「土用」や「節分」などのおなじみの節目があります。ニュースや天気予報などでよく耳にする季節です。
それでは24個に分けられた季節をひとつずつ見ていきましょう。それぞれの季節の読みの響きもとっても素敵です。
春
立春(りっしゅん)
【1月節、正月節】2月4日頃
寒さも一段落つき、梅の花が咲き始めて春が感じられる頃。暦の上では、この日から春になります。立春を過ぎてから初めて吹く強い風を「春一番」と呼びます。
【季節の植物】梅、蕗の薹
雨水(うすい)
【1月中、正月中】2月19日頃
雪が雨へと変わり、積もっていた雪や氷が溶けて水になるという意味。実際にはまだまだ寒さが堪える頃でもあります。
【季節の植物】菜の花、ヒヤシンス(風信子)
春分(しゅんぶん)
【2月中】3月21日頃
昼夜の長さがほぼ同じになる日で、太陽は真東から昇って真西に沈みます。日本の国民の祝日の一つで、たいていは3月20日か21日となりますが、毎年の日付は国立天文台が作成する『暦象年表』に基づいて閣議決定されます。この日は春彼岸の中日となっていて、お墓参りの習慣があります。
【季節の植物】桜、チューリップ(鬱金香)
清明(せいめい)
【3月節】4月5日頃
すべてのものが清らかで、明るく見えるころ。草木が芽吹いて花が咲き、生き物は生命力に溢れる輝かしい季節。関東地方ではお花見シーズン真っ盛りの頃です。
【季節の植物】山吹、マーガレット(木春菊)
穀雨(こくう)
【3月中】4月20日頃
農作物に天からの恵みである、優しい春の雨が降り注ぐころ。種まきなど、田畑の準備をする季節です。穀雨の終わり頃に雑節の「八十八夜」があります。
【季節の植物】牡丹、藤
夏
小満(しょうまん)
【4月中】5月21日頃
太陽の光を浴びていのちが満ちる、という意味。草木も伸び始める頃です。前年の秋に蒔いた麦に穂がつくころで「生育が順調でよかった」と少し満足したところから、小満と呼ばれるようになったそうです。
【季節の植物】紅花、花いばら
夏至(げし)
【5月中】6月21日頃
北半球では、一年でいちばん昼間が長く、夜が短くなる日。暦の上では夏の折り返し地点にあたり、夏至をすぎると暑さが本格的になりはじめます。昼間が一番長い日ですが、日本では梅雨の時期にあたり、昼間の長さが実感できないこともあるかもしれません。
【季節の植物】菖蒲、なでしこ
小暑(しょうしょ)
【6月節】7月7日頃
梅雨が明けて、暑さが本格的になり始める時期。セミも鳴き始め、いよいよ夏の到来です。小暑と大暑を合わせた期間を「暑中」といい、暑中見舞いを送る期間です。
【季節の植物】蓮、朝顔
大暑(たいしょ)
【6月中】7月23日頃
夏の暑さが本格的になるという意味で、1年の中で最も暑さが厳しく感じられる頃です。大暑とは逆に、最も寒さが厳しい時期とされる大寒はちょうど半年後で、小暑と小寒の関係も同じく半年後になります。
【季節の植物】桐、百日紅(サルスベリ)
秋
処暑(しょしょ)
【7月中】8月23日頃
夏の暑さも和らぎ始め、朝夕には涼しい風が吹くこともあり、過ごしやすくなってきます。そろそろ秋の台風シーズンが始まる季節です。
【季節の植物】木槿(むくげ)、凌霄花(ノウゼンカズラ)
秋分(しゅうぶん)
【8月中】9月23日頃
春分の半年後にあたる日で、同じくこの日も昼と夜の長さがほぼ同じになります。秋分を過ぎるとよるの時間が長くなり、秋らしさが深まり始めます。秋分の日は国民の祝日の一つにもなっていて、秋のお彼岸の中日といい、お墓参りをする習慣があります。
【季節の植物】彼岸花、金木犀
寒露 (かんろ)
【9月節】10月8日頃
秋が深まり、草木に冷たい露が降りる頃。日中は温かい日もありますが、徐々に朝晩が冷え込むようになってきます。北国では紅葉前線がスタートし始めます。
【季節の植物】菊、薄(ススキ)
冬
立冬 (りっとう)
【10月節】11月7日頃
この日から暦の上では冬が始まり、次の立春の前日までが冬とされます。木枯らしが肌寒く、冬の気配が感じられる頃とされ、北国では初雪の知らせも聞こえてきます。
【季節の植物】山茶花、水仙
小雪 (しょうせつ)
【10月中】11月22日頃
冬の入口に当たり、ちらちらと雪が振り始める頃。文字通り、雪の量はまださほど多くありません。紅葉も終わり、木々の葉が落ちて木枯らしが吹きます。
【季節の植物】木瓜、橘
冬至 (とうじ)
【11月中】12月22日頃
1年間で昼間が一番短くなる日。夏至のちょうど半年後に当たります。旧暦(太陰太陽暦)は、この日から暦がスタートします。最も太陽の力が弱い日ですが、この日を境に太陽が力を取り戻すことから、古くから世界各地で祝祭が行われます。日本では、冬至風呂として柚子湯に入ったり、「と」のつく食べ物を食べる風習があります。冬至にかぼちゃを食べるのは、「とうなす」と呼ばれていたため。
【季節の植物】猩猩木(しょうじょうぼく:ポインセチア)、南瓜、柚子
大寒 (だいかん)
【12月中】1月20日頃
小寒から15日後の1年で最も寒い時期。二十四節気の1年の最後の季節です。寒さを利用して凍り豆腐や寒天、酒、味噌などを仕込む時期でもあります。武道では寒稽古が行われます。
【季節の植物】椿、ふきのとう
参考サイト
- 【二十四節気・七十二候・節句・年中行事】暮らし歳時記
- わたしの根っこプロジェクト
- 二十四節気 七十二候カレンダー|暦生活
- 暦生活
- 日本の暦
- 暦Wiki/季節/二十四節気とは? – 国立天文台暦計算室
- 二十四節気 – Wikipedia
- 二十四節気|日本文化いろは事典
参考文献