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まさに芭蕉マジック!七夕に味わいたい松尾芭蕉「おくのほそ道」の傑作俳句

まさに芭蕉マジック!七夕に味わいたい松尾芭蕉「おくのほそ道」の傑作俳句:2ページ目

古事記の神話にも語られる佐渡島は、中世の昔までは罪人の流刑地でした。承久の乱に敗れた順徳上皇、日蓮宗の日蓮上人、室町時代の能楽師世阿弥など歴史上の敗者や、政権の怒りに触れた者が多く配流となり、その中には芭蕉も敬愛したであろう万葉歌人もいました。

芭蕉は句の前半で彼らの魂や人生、島につきまとう暗い歴史の翳に思いを馳せたのち、その闇をもすすぐ圧倒的な輝きときらめきの「天の河」で句全体を明るく照らしました。つまりこの「天の河」の一語によって佐渡島の暗い歴史や悲運の人々の魂を浄化するような、救済の句になっているのです。もしかすると芭蕉は短冊に願い事を書くように、この句で七夕の夜空に優しい願いをかけたのかもしれません。

芭蕉マジックはまだ続きます。

七夕といえば、織姫と牽牛(彦星)が会える日。すでに浮かんだ佐渡の情景に、最後に「七夕の恋物語」という美しいベールをかけることで、この句は完成されるのです。

この旅で、結局芭蕉は佐渡島に渡ることはできませんでした。芭蕉はその悲しみを、一年に一度の七夕の夜にしか逢うことができない織姫と牽牛の恋に重ね合わせて詠んだのです。牽牛は芭蕉、織姫は佐渡島。佐渡島に焦がれる思いも、七夕の切ない恋物語に重ねることでぐっと情緒的に私たちの心に迫ります。


この越後路の句は、七夕の夜に時を超えて私たちと芭蕉をつないでくれる、深く優しく美しい十七音の天の河なのでしょう。

参考文献:松尾芭蕉「おくのほそ道(全)」角川ソフィア文庫

 

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