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ルパン一味の家紋も制作!? 家紋の歴史を絶やさない…紋章上絵師・波戸場承龍さんインタビュー

ルパン一味の家紋も制作!? 家紋の歴史を絶やさない…紋章上絵師・波戸場承龍さんインタビュー:3ページ目

−−図案の意味や制作のコンセプトがわかると、がぜん面白いですね! 他にも有名人の家紋をデザインされていらっしゃるんですか?

「有名人といえば、ルパン三世とその仲間たちの紋をデザインしました」

−−え、あのルパン三世ですか!?

「ルパン一味の紋は、昨年『各キャラクターを漢字で』との依頼で作らせていただきました。今年はルパン三世50周年の年で、バージョンアップさせました」

−−この缶バッチがそれですね?

「はい。ルパンは宝袋の紐がネクタイ。次元はボルサリーノとマグナム。五右衛門は外枠を「川」、中に「石」で「石川」です。市川海老蔵さんが、ドラマで石川五右衛門を演じられましたが、市川家の家紋の三枡にも掛けています。不二子は藤の花で蝶、胴体が口紅、中央に峰の字を置きました。銭形は輪が十手、旭日章に「銭」です」

−−ファンにはたまらない演出ですね。こういうお話を聞いていると、伝統的な家紋の成り立ちにも興味がわいてきます。
以前、テレビ番組「デザインあ」(NHK)に出演されたとき、波戸場さんは筆を使用して、精緻な幾何学形態を描いていらっしゃいました。非常に柔軟な発想でデザインのお仕事をされていらっしゃいますが、技術面でも、現代的な要素を取り入れていらっしゃるのでしょうか。

「上絵師の仕事は、分廻し(竹製コンパス)と筆と溝引きを持ち、定規の溝に滑らせ直線を引いて描きます。現在は『KAMON-KOMON』『紋鑑』を手描きで作っています。「紋鑑」とは家紋の雛形で、紋付を作る際に見本で業者に渡すものです。

それと併行して、時代の需要に応える形で、現在はデジタルデータでの納品も行なっています。社名変更後、Macを導入して、AdobeのIllustrator(描画用ソフト)で、家紋を描き始めました。紋は線対称・回転対称なのでパソコンと相性が良いんです。また、家紋加工の新しい試みとして、スワロフスキーのクリスタルで家紋を施すといったことも行なっています。

−−なるほど。時代に即した家紋の展開ですね。現代の日本人の日常生活においては馴染みの薄くなってしまった家紋ですが、先ほどご紹介いただいたお仕事の数々を拝見していると、私たちは家紋の付いているものに、自ずと伝統や格式のイメージを持つようです。今後、家紋は私たちにとってどのようなものになっていくと思われますか?

「家紋は堅苦しいと思われがちですが、非常に自由度の高い面白いものなんです。江戸時代、庶民が家紋を持つ時、好きな役者の家紋を使ったということもあったそうです。当時の上絵師はデザイナーでもあり、多くの家紋を作り出しました。日本は西洋のように家紋を登録する制度はありませんから、多少の制限はありますが、今日からこれを家紋にすると宣言すれば、成立するものなんです。もちろん、本来は代々受け継ぐことが重要ですが」

−−贔屓の役者の家紋を? そんなミーハーな理由でも良かったとは。

「これからは個の時代、個人のアイデンティティーを表す紋を持たれる事をお勧めいたします。私は、これを『美章mishirushi』と命名しました。

家紋のほとんどは『円』で構成されています。『円』とは『縁』であり『宴』であり『苑』であり、そして『和(輪)』でもあります。すなわち『家紋』とは、日本人の家族に対する『やまとごころ』が象徴化されたグラフィズムなのです。

守るだけでは廃れてしまいかねない伝統の本来の価値を、柔軟な解釈と発想で再定義し、日本が誇る文化である家紋を世界に発信して行きたいと日々精進しています」

−−家紋は、過去の時代につくられた決まりきった図案ばかりだと思っていましたが、波戸場さんのお仕事はとてもクリエイティブですね。自分という人間を表す紋はどんな紋なのか、すごく興味が湧いてきました! 本日は貴重なお時間をありがとうございました。

取材・文=松崎 未來
協力=CAPSULE

■誂処 京源■
www.kyo-gen.com/

■展覧会情報■
波戸場承龍 “MONDAY”

会期:2017年2月25日(土)〜3月19日(日)の土・日曜日
時間:12:00〜19:00
休廊日:月〜金曜日
会場:CAPSULE
東京都世田谷区池尻2-7-12 B1F
03-6413-8055

capsule-gallery.jp

 

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