アーティストfeebeeが描く十二支のキメラが浮世絵に!伝統の技を受け継ぐ若き彫師・摺師と初コラボ:2ページ目
今回の新作の制作・監修にあたったアダチ伝統木版画技術保存財団では、後継者不足が深刻化している彫師・摺師の技術養成、そしてその技術をより多くの人に知ってもらうための活動として、毎年さまざまなアーティストとの木版画制作を行っています。同財団事務局の中山周さんによると、絵師・彫師・摺師の分業制から成る浮世絵の制作において、浮世絵師の仕事はイラストレーターやデザイナーの仕事に近いといいます。そこで2016年度は、イラストレーターの技能とアーティストのセンスを兼ね備え、幅広いファンを持つfeebeeさんに作画を依頼したそうです。
「浮世絵とは、そもそも世相や時代の流行を反映したもの。職人たちが同時代のアーティストと新しい感覚の作品をつくり上げることは、伝統の技術をいまに活かすことはもちろん、若い職人たちの意識や意欲の向上にもつながります」と中山さんは語ります。
次代を担う若い職人たちとの初の協同制作を行ったfeebeeさん。完成までに工房をたびたび訪れ、摺師の制作現場で色の打合せなども行ったそうです。feebeeさんがご自身のInstagramにアップロードした動画では、摺師が和紙に一色ずつ色を摺り重ねていく様子がわかります。
「今回の浮世絵では、デジタルイラストのような現代らしいポップな配色にしつつも、プリンター印刷とは違う木版画の質感を最大限に引き出せるよう職人さんにお願いしました。完成した作品にサインを入れている間、この一枚一枚が職人の手仕事によるものであるということが本当に嬉しかったです」
feebeeさんの制作時のお話からは、木版画の特質をよく理解されていて、下絵の段階で版の構成までを念頭に入れていたことがわかりました。中山さんも「木版画の制作工程を非常によく理解くださっていて、初めて一緒にお仕事をするとは思えないほど、スムーズに制作が進行しました」と驚いていました。
最後に、初の浮世絵制作について、feebeeさんに感想をうかがいました。
「職人さんが若い方でびっくりしました。先ほどの十二支の話にも繋がりますが、江戸時代から続く伝統技術の継承のひとつの代替わりに、私が絵師として立ち会えたことは意義深いことだと思っています。私のこの作品を手にした方が、絵の中の十二支を探しながら家族や友人と会話をはずませる、そんなコミュニケーションのきっかけをつくれれば嬉しいです。機会があれば、またぜひ一緒に職人さんたちと新しい作品を制作させていただきたいです」
この作品を通じて、feebeeさんのファンが、浮世絵やその制作技術に興味をもつきっかけになると良いですね。2月には、昨秋のニューヨークでのグループ展の凱旋展示で新作も発表予定。ますますfeebeeさんの活躍が期待されます。
なお、今回ご紹介した作品は2017年3月末まで、アダチ伝統木版画技術保存財団の常設展示場(東京・目白)で展示中です。作品が欲しいという方は、同財団の賛助会員へ入会ください。年会費(個人会員:2万円)は、若手技術者の育成事業に充てられるとのこと。アーティストの浮世絵を部屋に飾って、伝統技術の継承を応援するなんて、素敵な文化支援ですね。
「TENGAI 3.0」展
会期:2017年2月8日(水)〜2月25日(土)
会場:hpgrp GALLERY TOKYO
東京都港区南青山5-7-17 小原流会館B1F
電話番号:03-3797-1507
出品作家:天明屋尚、空山基、淺野健一、伊藤大朗、feebee、加藤美紀、影山萌子
開廊時間や会期中の休廊日については、ギャラリーHPなどでご確認ください。
取材・文=松崎 未來
協力=公益財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団