色々あるね!時代が生んだ歌舞伎役者ゆかりの伝統的な「茶色」をファッションに取り入れたい
江戸時代には町人文化が花咲いたことはご存知ですよね。中でも、歌舞伎は当時の一大娯楽で、主役である歌舞伎役者は大人気スターでした。
歌舞伎役者が身に付けた着物の色や柄は、浮世絵や瓦版を通じて発信され瞬く間に流行した、まさに当時のファッションリーダーだったのです。この歌舞伎役者が身に付けた色は、「役者色」として江戸時代の伝統色となりました。
成田屋のシンボルカラー「団十郎茶」(だんじゅうろうちゃ)
初代市川團十郎が舞台衣装として好んだ色で、赤みのうすい茶色です。ベンガラと柿渋で染めたことから、柿渋色、または柿色ともいわれています。荒事の芸を確立した五代目市川團十郎が『暫』でこの色の衣装を纏ってから、「団十郎茶」と呼ばれ、成田屋のシンボルカラーとなりました。
現代でも襲名披露の口上では、團十郎がこの色の裃(かみしも)を身に付けることで有名です。渋い色ですが、華のある歌舞伎役者が身に付けると華やかですね!
成駒屋のシンボルカラー「芝翫茶」(しかんちゃ)
江戸後期、文化、文政年間に大阪で人気のあった三代目中村歌右衛門(なかむらうたえもん)が好んだ色として、当時大流行した ややくすんだ渋い赤茶色です。
芝翫は歌右衛門の俳名で、「中村芝翫」は今、歌舞伎の名跡として有名ですよね。そう、今秋親子4人同時襲名を成し遂げた中村橋之助改め中村芝翫さんの「芝翫茶」なんです。苅安と棗の実を使い、灰汁媒染で染められた色なんですね。芝翫茶は、「芝翫香」など、着物だけでなく化粧品や食べ物、薬品にまでその流行が及ぶほど、当時を一世風靡した伝統色です。
江戸で流行った「路考茶」(ろこうちゃ)、「梅幸茶」(ばいこうちゃ)
濱村屋の二代目瀬川菊之丞(せがわきくのじょう)が好んで身に付けた くすんだ緑みの茶色です。この路考茶も着物の色に止まらず、髪型の「路考髷」や帯の結び方の「路考結」櫛の「路考櫛」などオリジナルの流行を生み出しました。歌舞伎役者って、ほんとうにすごい人気だったんですね!
初代尾上菊五郎(おのえきくごろう)が好んだと言われる薄くくすんだ黄緑色です。現代でいうモスグリーンを薄くしたような色ですね。
他にも、璃寛茶(りかんちゃ)などもあり、歌舞伎役者の俳名を冠した伝統色の茶色が数多く残っています。歌舞伎を観る時、役者の身に付ける衣装に注目してみるのも面白いかもしれません。
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