開始時刻、午前2時。参列料、5000円。京都の裏鬼門で天皇の使者が神を出迎える勅祭・石清水祭
京都の鬼門の守護といえば比叡山が有名ですが、その反対、すなわち南西の方角も裏鬼門と呼ばれ、守護の寺社が存在します。壬生寺・城南宮・大原野神社といったあたりがそうですが、さらに南西、もはや大阪の一歩手前というところに立つ男山の上から睨みを効かせてるのが、石清水八幡宮です。
九州・宇佐の地に現れた神仏習合の神・八幡神を、都の守護として平安初期に勧請したのが、石清水八幡宮の始まり。のちには源氏から深い崇拝を得た戦の神であり、数々の戦乱や元寇で恐るべき神威を発動。朝廷から篤い信頼を得て、賀茂社などの古社を抜き、伊勢神宮と並んで二所宗廟と呼ばれるほどのし上がりました。
神仏習合の神ゆえ、山はかつて「男山四十八坊」と呼ばれるほど、寺だらけ。朝廷のみならず大名たちからもお金が入り、正に坊主丸儲けの時代が長く続きましたが、明治初頭の神仏分離でそれが全部、解体。寺はことごとくつぶれ、僧もことごとくいなくなり、現在は山上の本殿と山麓の頓宮あるのみです。
例大祭の「放生会」もまた変更を余技なくされ、現在は毎年9月15日に「石清水祭」として執行されてます。が、宮中からの信頼は未だ篤いようで、この祭りには勅使、すなわち天皇陛下の使者が参向。葵祭・春日祭と並び、三勅祭のひとつと言われてます。
石清水祭の開始は、最も神威が高まる丑の時・午前2時。神様を乗せた御鳳簾=神輿は、500人のお供を連れ真っ暗な山の階段を降り、山麓の二の鳥居前で勅使の出迎えを受けます。勅使の案内で神様は頓宮=御旅所に入り、日が昇るのと同時に「奉幣の儀」で天皇陛下の供物=御幣物を捧げられるのです。
人間の都合より神の都合を優先した、凄まじいタイムテーブルであります。最寄り駅である京阪電車「八幡市駅」からは結構近いですが、始発も最終も、リーチ不能。雨天順延なども、ありません。束帯を着た勅使も、雨でずぶ濡れのまま神を待ってたりします。あと、この祭の正式参拝料は、5000円。500円ではありません。5000円です。いろんな意味で、大変な祭りなのです。
秘祭や奇祭が持ち上げられる昨今ですが、秘祭でも奇祭でもないのに、何かとんでもない、勅祭・石清水祭。興味があれば、神の都合に身を委ねてみるのも、いいんじゃないでしょうか。
石清水八幡宮 – 公式サイト
石清水祭次第 – 石清水八幡宮
石清水八幡宮 – Wikipedia