まずこの作品を見てどう思いますか?
江戸時代に葛飾北斎が海女の様子を描いた作品です。
でもこれ、よく見てみると…いや、よく見なくともどこか気味悪い感じがしませんか?作品に負のオーラがあるといいますか。
海女さんの手や足の曲がる方向がやけにおかしくて怖いのです。さらには足と腕が同じような太さで描かれているので、足が手のようで手が足のようでこれまた不気味。
この作品は25枚のセット作品のうちの1枚で、時期としては1822年の北斎漫画出版後、ドイツ人医師・シーボルトと当時の出島の商館長から注文を受けて葛飾北斎が手がけたものとされています。
ただ先にも書いたように、あまりにも作品の描きかたが一言で言うと下手ではないか?本当に葛飾北斎が描いた作品なのでしょうか?という疑問が湧いてきます。25枚の作品群のうちその他の作品に関してはこの作品とタッチは似てはいるものの、別段おかしいと感じる作品ではありません。
そこで思ったのはこれは葛飾北斎が弟子に描かせた?手伝わせたものなのでは?ということです。生涯で200人近い弟子がいたとされている葛飾北斎。さらには絵手本にするための北斎漫画を出版した後であれば、この作品が注文された当時は相当数の弟子がいたでしょう。
葛飾北斎程の売れっ子絵師であればそういったことも普通にされていたのではないか?と思うのです。そして他にこの作品に疑問を頂いた人はいないのか?探してみると弐代目・青い日記帳さんが同じような疑問を抱いていました。
薄気味悪い作品。手足や首がやばいほうに曲がってしまっている海女たち。「北斎漫画」を手本にしたとしても自然な動きに欠けます。
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北斎が直接手がけたかは別として周辺の絵師が描いたことに間違いはありません。
そうなんです。なんか気味悪いんです。やはり北斎が直接手がけたのかどうかは定かではなく「推定北斎」とされる作品のようですね。
今となっては真意のほどは不明で研究者の見解を参考にするしかありませんが、たまには有名絵師のひとつの作品を深く眺めてその時代背景やその時代の絵師の立場などを調べてみるのも面白いものですね。
この作品を見たみなさんの感想や意見、お待ちしています!
- 記事中の写真提供: Pinturas de Hokusai @ Flickr
- 参考: BnF – フランスと日本