『豊臣兄弟!』君は綺麗になった…信長が寧々に送った手紙がイケメンすぎる!一方、人たらし秀吉は:2ページ目
「前に会った時よりきれいになった」魔王の胸キュンワード
信長の手紙は…
仰せの如く、今度はこの地へはじめて越し、見参に入り、祝着に候。
殊に土産色々美しさ、中々目にも余まり、筆にも尽くし難く候。
で始まっています。現代版に意訳してみると、
「私の命でこの地(安土城)まで訪問しに来てくれて嬉しく思っている。その上に、土産の数々も美しく見事で、とても筆では言い表せないほどだ。」
と、紳士的なお礼の言葉で始まっています。
さらに、意訳してみると
「何かお返しをしたかったが、そなたの土産が見事だったので、何を返せばいいのかわからなかった。今度来たときに渡そうと思う。そなたの美貌は、以前に会った時よりも十のものが二十になるほど美しくなっている。」
と続くのです。
「前に会った時より、ずっと君は綺麗になった…」なんて、まるで現代のJ-POPの歌詞のような、胸キュンなパワーワード!
あの残酷な魔王と知られる信長が、こんなイケメンぶりを発揮する手紙を送るなんて意外ですよね。
さらに、
「藤吉郎が、そんなあなたに文句を言うなどとんでもない。そなたほどの女性を、あの“はげねずみ”は二度と見つけることはできない。
これからは、正室らしく堂々として、つまらないヤキモチなど妬かないように。もし女房としてなにか言いたい時は、全て言わないである程度にとどめておきなさい。この手紙は藤吉郎にもみせるように。 のぶ」
と締めくくられています。
寧々のことを労い、土産などに気を遣い、美貌が衰えずさらにきれいになったねと褒め、あの「ハゲネズミ」はけしからんと共感し。
最後は、「でも正室なのだから、ヤキモチなんか妬かず堂々としていなさい。言いたいことは100%ぶつけないでほどほどに」と柔らかく諌めています。最後に、「藤吉郎にもみせるように」添えているのも気遣いがありますね。
この手紙、最初は行間があいているのですが、徐々に筆が乗ってきたのか、後半はどんどん行間が詰まって字が小さくなり「むむ、書ききれない!」みたいになっています。
もっと褒めたり慰めたりしようと思って“信長も頑張ったのかな”と、微笑ましく感じてしまいました。
しかも、信長の「天下布武」の印章が捺されています。信長が自分の意思で書いた正式な文書に捺されるものです。
秀吉の度が過ぎた浮気を諫める手紙に「天下布武」とすることで、寧々が秀吉に見せやすくした、寧々が秀吉に怒られないようにしたのでしょうか。
「女性」を政治的な存在と認識していた?
冷酷な部分がクローズアップされる信長ですが、“女性の扱い方ひとつで家中も動く”と、理解していたような気がします。
寧々の訴えを「たかが女のやきもち」で雑に片付けずることは“政治的にマイナス”と判断したのではないでしょうか。
実際、信長の手紙は、まずねねの感情を先に受け止め、「それは腹立たしかろう」と共感し、秀吉を諭し寧々もやんわり諭すという順番。
「正論より、先に感情を受け止め共感して、やんわりと諫める」内容は、なかなか現代的な構成です。同時代の武将の書状としては、かなり異例と分析する意見もあります。
また、信長の周囲には正妻・濃姫、妹・お市ほか「黙らない女性」が多かったために「女性に対して“口を出すな”と押さえ込んでしまうよりも、上手に扱ったほうが合理的だ」と、大人の権力者らしい判断をしたとも考えられます。
いわゆる「フェミニスト」ではないものの、女性の感情を軽視すると、いずれ家中や政治に危険を及ぼす可能性がある……ということを知っていたのでしょう。
冷酷で合理性を追求する信長が、ときには驚くほど人間味のある手紙を書くというこのギャップは、そんなところから生まれたのかもしれません。

