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『べらぼう』総集編を振り返り!死の間際まで書を以て世を耕しエンタメを次世代にバトンタッチ【蔦屋重三郎・後編】

『べらぼう』総集編を振り返り!死の間際まで書を以て世を耕しエンタメを次世代にバトンタッチ【蔦屋重三郎・後編】:2ページ目

「遊びじゃねえから遊びにする」蔦重の困難を乗り切る“戯け”発想

日本橋の町が、浅間山の噴火の灰で埋もれてしまったとき、いち早くかけつけた蔦重。屋根に登って灰が店の内部に入り込まないよう、吉原で集めてきた女郎たちの着物を詰めて大活躍。

道端に積もった灰を川に捨てるために、町の人々を2チームに分けてどちらのチームが早く灰を片付けられるか競争を提案します。

「くだんねえ、遊びじゃないんだぞ!」と怒る日本橋の旦那。
「遊びじゃねえから遊びにすんじゃねえですか。面白くねえ仕事こそ、面白くしねえと。」

改めて観ると、この時のていさんとみの吉のハッとした表情がよくわかります。のちに分かることですが、一見お堅く融通が利かないように見えた日本橋の本屋のこの二人も、なかなかどうして、たわけることを知っている“こっち側”でしたね。

「遊びじゃないから遊びに、面白くない仕事だから面白く」この発想、心に留め置きたいと思った言葉。現代社会で仕事や用事に追われてストレスを抱えて過ごす現代人にも刺さる考え方だったと思います。

体を張って日本橋の町を守った蔦重。彼の熱意や一生懸命な思いは日本橋の人々の心を溶かしました。「日本橋油町の総意です」と鶴屋(風間俊介)が『耕書堂』ののれんを贈った場面は、何度みても心が震えます。

「戯ければ腹を切らねばならぬ世とは、一体誰を幸せにするのか」

老中・松平定信(井上祐貴)の締め付けが強い世の中、エンタメ業も厳しくなり蔦重は自分の決心を田沼意次(渡辺謙)に伝えます。

「先の上様と田沼様が作った世の中が好きでした。皆が欲まみれで良い加減で。私は書を持って世の風を守りたいと思います。」と。

そして、「ふざけりゃお縄になる世の中が待っている。そんな世の中に書を持って抗いたい。」と、チーム蔦重に宣言します。ずっと平賀源内(安田顕)の教えを胸に、けれども、世の中が変わった以上戦わねばならないと「書を持って世を耕す、耕書堂」から「書を持って世に抗う、抗書堂」になる決意をしたのでした。

けれども、“田沼を批判しているようで実は定信を揶揄う”本を出したものの、定信には通じず逆に自分を励ましてくれていると思われてしまう始末。

そこで、恋川春町(岡山天音)は、より過激な政権批判本を書くのですが、鶴屋が懸念したように定信の目に留まり激怒させてしまいました。春町は自分に理解をしめし励ましてくれていた藩主・松平信義(林家正蔵)とお家を守るために切腹。

松平信義(林家正蔵)の口を通して、定信に伝えた蔦重の「戯ければ腹を切らねばならぬ世とは、一体誰を幸せにするのか」も、心に残る言葉でした。

一方的に政治が民を押さえつけ「働け働け働け、休むな遊ぶな。倹約して身を慎め。忠義心を持て」など、そんな世の中は誰も幸せにはなりません。

抗うためにその後、教訓読本と称した吉原遊びの本を出して、逮捕された蔦重ですが、取り調べにわざわざ定信がでてきたのには驚きました。

老中といえば、現代では総理大臣くらいのポジションにいる人なので、普通はその姿を見ただけで萎縮してしまうでしょう。

けれども、田沼政治の自由な空気を消し、多くのクリエーターたちの筆を折り、恋川春町という天才を死に追いやった定信に向かい、ちっとも臆することなく舌鋒鋭く強烈な皮肉を連発する蔦重。肝が座った命懸けの大戯けでしたね。

ここで「へえ、おっしゃる通りで」と頭を下げてしまったら、今まで「吉原をもっといいところにする」べく本を作ってきた志に背いてしまいます。

吉原の女郎たち、日本橋進出を認めてくれた親父さんたち、蔦重の重荷になると姿を消した瀬川、自由に心のままに生きることを教えてくれた源内先生に顔向けできません。あのお白州の場で、よくも戯けたなと思いました。

一方で、定信も「正しくあろう」とすればするほど物事はうまく運ばず、本多忠籌(矢島健一)に「越中守様。人は『正しく生きたい』とは思わぬのでございます。『楽しく生きたい』のでございます!」と言われてしまいました。これも感慨深いセリフです。

「身上半減」の刑で、見事にのれんや看板などすべてを半分にされがっくり来ていたものの、訪れた太田南畝(桐谷健太)に「世にも珍しい店だ!」と言われ、町の人が大笑いしているのをみて「身上半減の店」の看板を出して本を売り込むのは、はさすが、転んでもただでは起きない蔦重でした。

3ページ目 蔦重が築き分け与えた“書”は多くの人々に渡り心を満たす

 

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