『べらぼう』総集編、1年間の“夢噺”をありがた山!高い志と行動力で出版界の風雲児へ【蔦屋重三郎・前編】:2ページ目
「女の股で飯食ってる腐れ外道の忘八の心意気」
ドラマの舞台が吉原だった頃、地本問屋の・西村屋(西村まさ彦)の策略で、“蔦重は版元になれない問題“が持ち上がった時に、亡八たちを説得するときの言葉は強く印象に残っています。
「やつらに流れる金は、女郎が体を痛めて稼いだ金じゃねぇですか。女郎の血と涙が滲んだ金を預かるなら、女郎に客選べるようにしてやりてえじゃねぇですか。」
「それが、女の股で飯食ってる、腐れ外道の忘八のたった一つの心意気なんじゃねえですか!」
人間として大切な八つの“徳”を忘れた亡八へ向けた、魂がこもった演説。
女郎は体を痛めつけるようなタチの悪い客も断れない。だから、「女郎が体を売って」ではなく「女郎が体を痛めて」稼いだ金。
病になり食べ物もろくに与えられず死んだら裸にされ地べたに転がされる。そんな女郎たちの最期の姿は、常に蔦重の心の中に刻まれているのでした。
蔦重の真剣な思いは、亡八たちの心も動かします。
西村屋に対抗すべく本気を出す蔦重は、各店の所属女郎を調べ上げ情報を集めました。元原稿を描く新之助(井之脇海)も、彫り師の四五六(肥後克広)も何度も修正が入りブチギレながら蔦重の要望に応えます。
そして、五代目瀬川を襲名する覚悟を決め「それを細見に載せれば売れる」と伝える男前な花の井(小芝風花)。擦りあがった紙を、歌いながら、折り・断ち・綴りを手伝ってくれ本を仕上げる二文字屋の女郎たち。
まさに蔦重らしい“周囲の人々を巻き込んでいく吸引力”を感じたシーンです。
誰もが蔦重の目的は、自分の金儲けだけではなく「吉原をよりよい場所にしたい」ということだと知っているからこその共同作業でした。
嫌がらせや妨害を受け、見下されても笑顔で対応したあとに、“ギャフンといわせる”という手腕。ただ猪突猛進なだけではなく、ひらりとかわすところはかわし相手を転ばせる、そんな頭脳戦にもたけているのが面白かったですね。
蔦重を見下していた本屋たちが「半値になる」と言われ「売ってくれ!」と慌てる場面は胸がすく思いでした。

