『べらぼう』大河史上に残る“おさらばえ”…もう一度逢いたい瀬川(小芝風花)、涙腺崩壊の名場面10選【後編】:3ページ目
長い長い初恋を、ありがた山のとんびがらす…に涙
大晦日、蔦重は瀬川と一緒に営む新しい店舗の準備に追われます。同じ頃、瀬川も蔦重の家に行くべく、荷造りをしています。蔦重にもらった『青楼美人合姿鏡』を手に取ってその時のことを思い出す、瀬川。
「吉原を楽しい場所に、女郎がいい思い出を持って大門を出て行ける場所にしたい」と語った蔦重の“夢”(瀬川の夢でもあった)の言葉が蘇ったのでした。
元旦、蔦重は瀬川が残した手紙を受け取ります。
“元花魁と吉原者の二人が営む本屋は、吉原の中でささやかに営むならうまくいくだろう。けれど、吉原を改革して大きな仕事をするには、元悪徳金貸しの妻で花魁だった自分がいては、足をひっぱってしまう”と書いた手紙でした。
涙を流しながら手紙をしたためる瀬川の姿と手紙の朗読に、そ、そんな……と息を呑んだ視聴者がほとんどでしょう。最後のしめくくりの言葉は「長い長い初恋を、ありがた山のとんびがらす」。
もらい泣きしつつ、せっかく一緒になったのになぜと悔しい切ない思いをした視聴者がほとんどだったはず。
“好きな人のため自分の身を投げ出す” 瀬川らしい辛過ぎる選択でした。
けれども、その後の人生で蔦重が行った仕事や日本橋への進出など“蔦重栄華乃夢噺”を叶えていく活躍ぶりを思うと、瀬川の行動は正解だったのかもしれないと、今だったら思える部分もあります。
最後にもう一度瀬川に逢いたい
蔦重が晩年に近づいてきた今。やはり気になるのは“瀬川は、今何をしてどこにいるのだろう”ということ。もしかしたら、いつも「そうきたか!」なストーリー展開で視聴者を驚かせる森下佳子さん脚本のこと。
視聴者の多くが望んでいる「もう一度瀬川に逢いたい」を叶えてくれるかもしれません。
実は、江戸にいて幸せな結婚生活を送っていて、耕書堂の本を読んで「こんな本を出すなんて、まったく重三は相変わらずべらぼうだねえ!」などと笑っていたかも。(たぶん、モテるのが夢の艶二郎(古川雄大)の『江戸生艶気樺焼』を読んで)
駆け落ちの時、瀬川は蔦重に渡された女形通行手形の半分切って着物の胸元にしまいましたね。あの手形には名前の部分に「しお」とありました。瀬川が大切にしていた『塩売文太物語』の主人公の娘と同じ名前です。
もしかしたら、花の井でも瀬川でも瀬以でもなく、今は「しお」と名乗っているかも……などと、勝手に想像してしまいます。
何かの偶然で、ばったり二人が再会し「ソウルメイトだったお前(あんた)のことは忘れたことなどなかったよ」と、微笑み合えるといいなあなどと思ってしまうのでした。
内側から輝くような美しさと強さを持つ瀬川。登場人物の中でも、心の中にずっと残り続ける魅力的な人物でした。
まったく「べらぼう」だった二人の“夢噺”のしめくくりはどのような展開になるのでしょうか。