『べらぼう』残りわずか2話!もう一度逢いたい蔦重のソウルメイト瀬川(小芝風花)、涙腺崩壊の名場面10選【前編】:3ページ目
「心変わりなんてしないだろうね!?」と胸ぐらを掴む
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」。
鈍感な蔦重も、瀬川の鳥山検校(市原隼人)との身請けを聞いて、初めて自分の中に瀬川への想いが育っていることを自覚します。身請けを止めたいあまりに、検校を罵り瀬川を怒らせてしまいました。
ようやく、頭を下げ「……行くなよ。頼むから行かねえで」「俺が!お前を幸せにしてえの!」と懇願。
そんな蔦重に、驚き、嬉しさ、喜び、戸惑いさまざまな感情が渦巻いたのか唇が細かく震えている瀬川。
「どうやって」と瀬川に問われ、しどろもどろになった蔦重は「どうにか…」といいますが、「どうにかって何だよ!べらぼうが!」と怒られてしまいます。
“年季明けには”という蔦重に、つかつかと歩み寄り、胸ぐらを掴んで「心変わりなんてしないだろうね!?」と瀬川。「ったりめえだろうよ」「心変わりなんかできっかよ」という蔦重の顔をじっと見つめる瀬川の表情が緩み涙が。そしてふたりで照れ隠しの泣き笑い。
蔦重役の横浜流星さんと瀬川の小芝風花さんの二人だけの演技は心に残りました。ようやく、瀬川の想いが実ったか!と嬉しくなるような場面でしたね。
瀬川は、惚れた蔦重に熱く告白されて袂で涙を抑えて泣く、相手の胸元で泣くとかではなく、まさかの「胸ぐらを掴んで真意を問う」のが、最高にかっこよかった。
あの“胸ぐら掴み”は、小芝さんの「今までの蔦重との関係を考えると、告白されてもこのほうがいい」というアイデアだったそう。ぴったりでしたね。
「馬鹿らしい話…わっちは一生忘れない」という覚悟
一緒になるため、蔦重と瀬川は駆け落ちを計画しました。けれど、一足先に足抜けしたうつせみ(小野花梨)と新之助(井之脇 海)が失敗し、折檻されているところをみて、考えが揺らぎます。
さらに「五代目瀬川という大名跡を継いだ花魁の生き方は、女郎たちの希望になる」と、松葉屋のおかみ・いね(水野美紀)に諭され、鳥山検校の豪勢な身請け話を引き受けることにします。
その決意を伝えるため、蔦重に渡されていた本『心中天網島』(瀬川が大門をでるための通行女手形が挟んであった)を返しました。
「この本、馬鹿らしうありんした……足抜けなんて上手くはずがない」と、本の話をしているように見せかけて“駆け落ちはしない。身請けをする”という覚悟を語ります。
「悪かったな。つまんねえ話すすめちまって」という蔦重に、何を言ってんだ「馬鹿らしくて、面白かったって言ってんだよ。」と返す瀬川。
「この馬鹿らしい話を重三がすすめてくれたこと、きっとわっちは一生忘れないよ」と。一瞬重なる手と手。二人の恋は、あっという間に消えてしまいました。
「この重なった手の温もりも、あんたが駆け落ちを決めたことも、あっちは生涯忘れないよ蔦の重三。」 心の中で、きっとそう語りかけていたことでしょう。もう後戻りはしないという、毅然とした覚悟を感じる切ない場面でした。
小さい思い出のカケラを大切に生きていく
瀬川が、何かにつけて読んでいた『塩売文太物語』。子供の時に初めて蔦重から貰った本です。内容は、主人公の娘が苦労はしても最後に好きな男性と結ばれるハッピーエンド。
花魁稼業は、華やかそうに見えても体を売るつらい商売。時には乱暴で嫌な客に抱かれなければならないこともあります。
そんな日々、“いつか大好きな蔦重と一緒になれたらいいのにな”と夢を見て、心の拠り所にしていたのでしょう。
漢前できっぷがよくて優しい瀬川。江戸っ子らしい“おきゃんな娘”という顔と、花魁になった時の凄みすら感じる美しい顔の対比がお見事でした。
【後編】に続きます。

