「べらぼう」大崎に“死”の宣告…なぜ計画を見破った?ラスボス・一橋治済の狂気に満ちた展開を考察【後編】:2ページ目
噂話とあて推量が大好きな江戸っ子を利用
案の定、耕書堂の仮店舗の店先で「なんだこれ!」「これはグニャ富だね」などと人々が盛り上がります。
そこに、グニャ富(中村富三郎/坂口涼太郎)本人が登場。「なんだいこりゃ!こんな風に描いたなんて聞いてないよ!」と怒ります。そっくりとはいえども、かなりデフォルメされた絵になっているので、女形の役者としては怒るのも当たり前でしょう。
口八丁の蔦重が丸め込もうとするも「しゃらくさいよ!」とグニャ富が店頭で大暴れ。
この面白い大騒ぎは噂となり注目を集め、江戸っ子たちは「写楽は誰だ?」と、世論は狙い通りに湧き上がります。
「これは歌麿だ」「いや勝川春章だ」「この感じは重政か政美」「政演だろう」「いやいや一九がいるぞ」と江戸っ子は当て推量に大盛り上がり。それぞれ「推しの絵師」がいるのは現代も一緒ですね。
さらに、源内の親友杉田玄白(山中 聡)までも「写楽は源内だ」と言い出し、瓦版にもなり、「写楽は源内、平賀源内は生きていた!」という噂が広まります。
よくも悪くも、噂に乗っかりやすく拡散するのが大好きな江戸っ子たち。以前、同じ人々が「米がないのは田沼のせい」と興奮し、天変地異まで「田沼意次(渡辺謙)のせい」と盛り上がっていたことを思い出しました。
田沼意知(宮沢氷魚)の葬儀では石まで投げて興奮し、意知を斬った佐野政言(矢本悠馬)のことを「佐野大明神」と崇めて盛り上がってましたね。
そんな彼らの影響されやすい気質を「写楽=源内」の噂に利用したのは、田沼親子を罵った江戸っ子への蔦重なりの仕返しだったような気がしてなりません。

