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『べらぼう』恋心を秘めた歌麿と決別、初めての子との別れ…どん底に落とされた蔦重の悲劇【後編】

『べらぼう』恋心を秘めた歌麿と決別、初めての子との別れ…どん底に落とされた蔦重の悲劇【後編】:3ページ目

「俺、蔦重とはもう組まない」

蔦重の鈍感さに呆れる視聴者の声も多いのですが、ドラマを観ているほうは俯瞰してずっと両方を観てきたからこそ分かるもの。兄弟でかつ大切な仕事の相棒同士なのに、恋心があると勘づくのは無理でしょう。歌麿もそれらしいことは何ひとつ言ってませんでしたし。

「俺に好きな女ができるのがそんなに嬉しいのか」と聞く歌麿に「あたり前だろ。おきよさんと一緒になったときのお前、そりゃ楽しそうでよ。またそうなってくれねえかと思っていた」

確かに蔦重は、鈍感は鈍感なのですが、これは“兄として”妻を失い苦しんでいた弟に新しいパートナーができることは喜ぶのは当たり前でしょう。「誰だよ」と聞かれても、「言えねえな。俺が好きなだけで向こうには脈はなさそうだし」と答える歌麿。

言ったところで、蔦重が困るだけで自分の想いが成就するわけでもありません。
かえって、蔦重に気を遣わせて、今までの“兄弟として遠慮なく何でも話ができる間柄”まで壊れてしまうでしょう。自分でも持て余していた“恋心”に、自ら決別をつけた瞬間だったと思います。

「うまくいったら教えてくれ」という蔦重に「俺、蔦重にはいわねえよ」と返事をする歌麿に、「好きな女の話」ではない不穏なニュアンスを感じ、はじめて蔦重の顔が不審そうな表情に変わります。

「は?」と顔をしかめる彼に「俺、蔦重とはもう組まない」と最後通告をする歌麿。

その決別の理由を、自分の名前と蔦屋の印の配置のことや、西村屋の跡取りに「そうきたか!」と思わせるような面白い提案をされたことなどをぶつけましたが。自分の想いをはっきりと告げなかったのは、歌麿なりの「打ち明けたところでどうにもならない」「蔦重を困らせるだけ」という思いやりもあったでしょう。

懸命に引き留め「なんでもする」という蔦重に「じゃあ俺をあの店の跡取りにしてくれ。あの店を俺にくれ。」と、本当は店など欲しいわけでもないのに無理難題をふっかけます。

それは無理だという蔦重に、「蔦重はいつもそうなんだ。お前のためお前のためって言いながら、俺の欲しいものなんて何一つくんねぇんだ

歌麿が一番欲しいのは、蔦重にとって「唯一無二の存在」「一番の存在」であることなのに。ていと結婚し子供ができ、絶対にそうはなれない歌麿の最後のわがままでした。

そんな歌麿も切ないのですが、自分では大切にしてきたつもりの弟歌麿からの突然の別れに呆然とする蔦重も切ないものがありました。

4ページ目 蔦重に訪れた歌麿との決別と初めての子との別れ

 

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