怪談めいた都市伝説とは?大阪有数の人気スポット、道頓堀・千日前の知られざる歴史[後編]:3ページ目
あの世への入口にあたる鎮魂の寺・法善寺
ビックカメラなんば店から千日前通りを北へ戻ると、数分で法善寺に着く。本尊に阿弥陀如来を祀る浄土宗の寺院で、1637年(寛永14年)、琴雲によって創建された。
同寺で有名なのは、全身が緑色の苔で覆われた西向不動明王、通称「水掛不動」である。この仏さまは人々の願い事を助け、後押ししてくれる御利益があるとされ、昼夜を問わず老若男女の参詣者で賑わう。
また、水掛不動のすぐ横には稲荷大明神が祀られ、ほかにも観世音・歓喜天・弁財天などがあり、この一画はまるで神仏の集合住宅のような趣を呈している。
法善寺は江戸時代、「千日寺」とも呼ばれ、千日念仏を行う寺院であった。その背景には、寺域周辺に刑場・火葬場・千日前墓地があり、隣接する竹林寺・自安寺・榎神社などとともに、死者を弔う寺院としての役割を担っていたことがあると考えられる。
1845年(弘化2年)に描かれた『弘化改正大坂細見図』には、「千日墓」と記された千日前墓地のほか、荼毘に付す焼き場や「刑場」と記された処刑場も描かれている。
戎橋を中心に北に広がる島之内の色里、南側の道頓堀の芝居小屋、そして命の終焉の地である千日前の墓地と弔いの寺院。
つまり、法善寺が建つ場所はかつて「地獄門」とも呼ばれ、人々のさまざまな情や怨念が染みついた場所であったのである。
「道頓堀・千日前」は、昔も今も人々の信仰を集める場であると同時に、その雑多さが多くの人々を引き付ける魅力となっているのであろう。
※参考文献:大阪歴史文化研究会著 『大阪古地図歩き』 メイツユニバーサルコンテンツ刊


