【べらぼう外伝】武士から戯作者に…義賊「自来也」を生み出した感和亭鬼武とは何者?:2ページ目
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自来也から児雷也へ
かくして一躍有名になった感和亭鬼武ですが、どこから伝染されたのか梅毒を患い、文化15年(1818年)2月21日に59歳で世を去ります。
鬼武が生み出した自来也は大きな反響を呼び、天保10年(1839年)から明治元年(1868年)まで美図垣笑顔(みずがき えがお)が『児雷也豪傑譚(じらいやごうけつたん)』を連載しました(残念ながら未完)。
こちらも嘉永5年(1852年)に河竹黙阿弥(かわたけ もくあみ)が歌舞伎化し、また大正10年(1921年)には日本初の特撮映画「豪傑児雷也(監督:牧野省三)」など、永く愛され続けています。
『児雷也豪傑譚』主要人物
- 尾形周馬弘行(おがた しゅうまひろゆき)
児雷也の正体。肥後国の豪族で、越後妙高山で蝦蟇の妖術を修得する。
- 綱手(つなで)
児雷也の妻で、蛞蝓(ナメクジ)の妖術を使う。
- 大蛇丸(おろちまる)
児雷也の宿敵で、青柳池の大蛇から生まれた。蛇の妖術を使う。
- 仙素道人(せんそどうじん)
児雷也の師匠で妙高山に棲む。蝦蟇の妖術を授ける。
児雷也がカエル、綱手がナメクジ、そして大蛇丸がヘビ。この三角関係はいわゆる三すくみのモデルとなりました。
三すくみとは
カエルはナメクジより強いけど、ヘビが怖い。
ヘビはカエルより強いけど、ナメクジが怖い。
ナメクジはヘビより強いけど、カエルが怖い。
だからカエル・ヘビ・ナメクジが同時に出会うと、それぞれ怖くて三人とも動けなくなる……という慣用句です。
終わりに
今回は剣客・武士から戯作者となった感和亭鬼武について、その生涯をたどってきました。
彼が有名キャラクター「自来也(児雷也)」を生み出していたとは驚きですね。
梅毒で生命を落としたのは残念ですが、もし彼が健康だったら、どんな作品を生み出していたのでしょうか。
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※参考文献:
- 岡本綺堂『綺堂随筆 江戸の思い出』 河出書房新社、2002年
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