「魂を揺さぶる悪い女」!?アイヌの“ことわざ“が想像以上にユニークだった:2ページ目
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あきれたものだ。口に燠(おき)が入ったように早口でまくしたてる
ホッノ イヨーハイ パロホ ウサッ オマー ペコロ アンワ イルシカ コロ アン
口に熾火が入っていたら、一刻も早く吐き出すために口を動かすでしょう。
それを早口に喩えたものですが、口に熾火が入ってしまう状況というのは、にわかに想像しがたいですね。
あるいはそんな事例があったのでしょうか。
天から役目なしに降ろされたものは一つもない
カント オロ ワ ヤク サク ノ ア・ランケペ シネプ カ イサム
個人的に好きなことわざです。
例えば害獣とか益虫とか、とかく人間は自分たちの利害で相手を区別することが多くあります。
しかし彼らはただ生きているだけであり、広く見れば生態系を維持する自然の営みに過ぎません。
人間もまたその一員であり、決して君臨している訳ではないことを、再認識させてくれます。
私の魂を揺さぶる悪い女
イラムコスイェ イウェンテマッ
何だか歌の文句に出てきそうなフレーズですね。
アイヌの価値観では、心の平安をこそ重んじたのでしょう。だから良くも悪くも、心を乱されることを忌み嫌ったのだと考えられます。
……が、狂歌にも
世の中で カネと女が 敵(かたき)なり
どうか敵に 巡り会いたい
などとは誰が詠んだか、アイヌも人間ですから、やはり建前と本音を併せ持っていたようです。
この悪い女シリーズは色々ありますが、多くのアイヌ男性たちが心を乱されてきたのでしょうね。
終わりに
今回はアイヌのことわざについて紹介してきました。
地域性が色濃く出ているものがある一方、全人類に共通しそうなものなど、実に様々です。
日本各地や世界各国のことわざについても、調べて紹介したいと思います。
※参考文献:
- 萱野茂『萱野茂のアイヌ語辞典 増補版』三省堂、2002年10月
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